社員のエンゲージメントを高めるには

Z世代を「戦力」に変える人事戦略 ─ データが示す、もう「感覚」だけでは通用しない時代の処方箋 ─

作成者: JOB Scope編集部|2026年 8月14日

第56回

Z世代を「戦力」に変える人事戦略
─ データが示す、もう「感覚」だけでは通用しない時代の処方箋 ─

2026/8/14

 

 

 

 はじめに─ あなたの会社でも、こんなことが起きていませんか? 

丁寧に採用・研修したのに、入社1年以内に退職届が出た

「配属ガチャ」「上司ガチャ」という言葉が社内で聞こえてくる

研修や1on1を実施しているのに、若手のエンゲージメントが上がらない

人事評価制度を改定したが、若手から「よくわからない」と言われる

採用コストをかけても、すぐ転職されてしまいROIが出ない

 

これらの悩みは、人事担当者の「力不足」でも、若手の「根性不足」でもありません。

世代間の価値観の構造的なズレから生まれている課題です。

そしてこのズレを正しく理解し、戦略的に対処している企業と、対処できていない企業の間には、今後ますます大きな格差が生まれていきます。

 

 

 PART 1 ─ データが語るZ世代の「リアル」 

まず、感覚論を排してデータを見てみましょう。

 

● 大卒3年以内離職率は「34.9%」─ 16年ぶりの高水準

厚生労働省が2025年10月に公表した最新の「新規学卒就職者の離職状況」によると、2022年3月卒の大卒者の3年以内離職率は33.8%。前年(34.9%)からわずかに低下したものの、依然として3人に1人以上が3年以内に離職しており、「3年3割問題」は解消されていません。

また、従業員1,000人以上の大企業においても27.0%と、過去2番目に高い水準を記録しており、「大手なら定着する」という通念も崩れつつあります。

 

出典: 厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況(2022年3月卒業者)」(2025年10月24日公表) https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000177553_00010.html

 

● 入社時点でも「転職前提」の若手が約4割

東京商工会議所の「2024年度新入社員意識調査」によると、「チャンスがあれば転職したい」と回答した新入社員は10年前に比べて14.5ポイント増加。「将来は独立」「時期をみて退職」まで含めると、Z世代の新入社員の約4割が入社段階から退職を想定しているという驚くべきデータが示されています。

 

出典:第一生命経済研究所「シリーズZ世代考(5)」https://www.dlri.co.jp/report/ld/431601.html

 

● 離職の真の理由は「給与」だけではない

3年以内に辞めたZ世代の退職理由(OpenWork調べ)では、「キャリア・個人の成長」が最多。

次いで「仕事へのやりがい」「人間関係・社風」「ワークライフバランス」が続きます。

「賃金」はもちろん重要ですが、「この会社でどう成長できるか」「自分の仕事に意味があるか」というインナーモチベーションが、Z世代の離職判断の核心にあります。

 

出典:OpenWork「3年以内に辞めたZ世代の入社&退職理由ランキング」https://www.openwork.co.jp/press/2025022701

 

 

 PART 2 ─ Z世代の価値観・仕事観の構造を理解する 

「Z世代は何を考えているかわからない」─ そう感じるのは、彼らを従来の価値観フレームで見ているからです。

正しく理解すれば、彼らは決して「やる気のない世代」ではありません。

 

① 「安定」と「バランス」を働く目的の最上位に置く

ヒューマンホールディングスがZ世代1,000名を対象に行った「Z世代の仕事観と自分らしさに関する調査2025」によると、働く目的の第1位は「経済的な安定を得るため」、第2位「安定した人生を送るため」。バブル崩壊、リーマンショック、コロナ禍を幼少期から見てきた世代は、リスクに対して極めて現実的です。「夢を追う」よりも「安定した足場を確保する」ことが、まず第一の動機になっています。

出典:ヒューマンホールディングス「Z世代の仕事観と自分らしさに関する調査2025」https://www.athuman.com/news/2025/24784/

 

② 「市場価値」への強い意識 ─ ただし「自分のペース」で

SHIBUYA109エンタテイメントが24卒・25卒を対象に行った調査では、「自分の市場価値を上げたい」と回答したZ世代は75.1%。

一方で「誰よりも早く成長したい」は49.1%にとどまり、「自分のペースで成長したい」は80.1%と大多数を占めました。

つまりZ世代は「成長意欲がない」のではなく、「無理な成長を強要されることへの拒絶感が強い」のです。

画一的な研修スケジュール・一律の目標設定・上から押し付けられるキャリアパスは、この世代のモチベーションを著しく低下させます。

出典:SHIBUYA109エンタテイメント「24卒・25卒に聞く!Z世代のキャリア観に関する意識調査」https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000284.000033586.html

 

③ 「仕事の意味・納得感」がモチベーションの源泉

マイナビの調査(2025年)では、Z世代は「仕事に関して意味や納得感を求める傾向が強く、単なる給与や福利厚生だけではモチベーションを維持しづらい」と分析されています。

なぜこの業務をやるのか、どう自分の成長につながるのか、どう会社・社会に貢献するのか─ これらを丁寧に説明しないと、彼らは「やらされ感」を強く感じます。

出典:マイナビキャリアリサーチLab「Z世代とは?」https://career-research.mynavi.jp/column/20251203_104878/

 

④ 年功序列・属性による評価への強い拒否感

マンパワーグループの分析によると、Z世代は「能力や適性、貢献度ではなく、属性や年齢だけで評価されることに納得できない」傾向が顕著です。

「配属ガチャ」「上司ガチャ」という言葉が示すように、不透明な人事プロセスへの不信感が、入社直後から離職意向を高めます。

出典:マンパワーグループ「新卒の離職率─Z世代の特徴を踏まえた対策5つ」https://www.manpowergroup.jp/client/manpowerclip/employ/newgrad-turnover.html

 

⑤ 「競争」より「協調」─ 上司世代との根本的なギャップ

SHIBUYA109 lab.が2025年4月に行った「Z世代と上司世代の仕事観ギャップに関する調査」では、Z世代の若手社会人の特徴として「同僚や先輩に対して競争心を持ったことはない」「批判し合って切磋琢磨するより、ぶつかり合うことなく折り合いをつけながら仕事がしたい」「周りの人たちができることを身に着けたい」という傾向が明確に示されました。

キーワードは「みんなで一緒に、同じくらい」。競争原理で機能する従来型の人事制度とは、根本的な相性の悪さがあります。

出典:SHIBUYA109 lab.「Z世代と上司世代の仕事観ギャップに関する調査」https://www.shibuya109.co.jp/shibuya109lab/reports/250528/

 

 

 PART 3 ─ 従来の人材育成・研修が機能しない理由

Z世代の価値観を踏まえると、従来型の研修・育成が機能しない理由が明確になります。

 

問題① 「一律・画一」の研修設計

全員同じカリキュラム・同じスピードで進める集合研修は、「自分のペースで成長したい」Z世代の80%が望む育成スタイルと真逆です。

「なぜ自分はこれを学ぶ必要があるのか」という納得感がないまま進む研修は、彼らには「強制」にしか感じられません。

 

問題② フィードバックの頻度と質の不足

Z世代はSNSネイティブ。即時フィードバックに慣れた世代に、半期に1度の人事評価だけでは成長実感を与えられません。

日常的な小さな承認・フィードバックが不可欠です。

 

問題③ キャリアパスの不透明さ

「5年後、10年後にどんなキャリアを歩めるか」が見えない環境では、Z世代は「この会社で市場価値が上がるか」を不安視し、早期に外部の選択肢を探します。

 

問題④ 育成期間の短さ

HR総研の2025年調査では、「3年以内離職率が30%以上の企業」では、育成期間を「1年未満」と設定している割合が約50%にのぼっています。

短期間での戦力化を急ぐほど、逆に離職リスクが高まるという皮肉な実態があります。

出典:HRプロ「若手離職率を左右する育成期間の真実とは」https://edenred.jp/article/hr-recruiting/304/

 

 

 PART 4 ─ Z世代が定着し、力を発揮する人事戦略の処方箋 

では、具体的に何を変えればいいのか。以下の5つの柱を中心に、戦略的な人事改革を進めることをお勧めします。

 

【柱1】採用段階でのリアリティ・ショック防止

「配属ガチャ」「上司ガチャ」という不信感は、入社前後の情報ギャップから生まれます。

採用時点で「配属プロセスの透明化」「リアルな職場情報の開示」を行い、入社後ギャップを最小化することが最初のステップです。

厚生労働省の調査でも「採用前の詳細な説明・情報提供(58.4%)」が早期離職防止策の第1位に挙げられています。

 

【柱2】個別化されたキャリア開発支援

「自分のペースで、自分軸で成長したい」Z世代には、一律のキャリアパスではなく個人の志向・強みに合わせたキャリア開発プランが必要です。

定期的な1on1を活用したキャリア対話、ジョブ型雇用・社内公募制度の整備、プロジェクトベースのアサインなど、個人が「自分のキャリアを自分で選んでいる感覚」を持てる仕組みが定着を促します。

 

【柱3】「なぜ」を起点とした仕事の意味づけ

業務を依頼するとき、「何をやるか」だけでなく「なぜやるか」「これはどんな意義があるか」を丁寧に伝えることが、Z世代のエンゲージメントを引き出す鍵です。

マネジャー教育においても、この「意味の提供」スキルを組み込むことが必須です。

 

【柱4】評価制度の透明化・納得感の醸成

年齢・勤続年数ではなく「能力・貢献度」での評価を可視化し、評価基準・プロセスをオープンにすることが不可欠です。

「配属や評価がなぜそうなったか」を説明できない人事部門は、Z世代から急速に信頼を失います。

 

【柱5】柔軟な働き方制度の実質的整備

Z世代が希望する制度のトップは「週休3日(35.1%)」「フレックスタイム(20.1%)」「副業・兼業の許可(18.5%)」。「制度として存在する」だけでなく、実際に使いやすい文化・運用が整っていることが重要です。「メンタルヘルスサポート(11.2%)」「学ぶための休職制度(12.1%)」への需要も高まっており、ウェルビーイング重視の姿勢が定着率に直結します。

出典:ヒューマンホールディングス「Z世代の仕事観と自分らしさに関する調査2025」https://www.athuman.com/news/2025/24784/

 

 

 PART 5 ─ 経営層・人事責任者へのメッセージ 

「Z世代問題」を人事部門だけの課題として捉えている企業は、改革が遅れます。これは経営戦略の問題です。

2025年現在、労働力人口は減少の一途をたどり、採用競争は「超・売り手市場」が続いています。

世界経済フォーラム(ダボス会議)の報告でも、Z世代は「高い意欲と能力を持ちながら、自分の立ち位置を確立できずにいる」世代として注目されており、彼らを活かせる企業が次の10年の競争優位を握ります。

出典:世界経済フォーラム「データが示す、Z世代が仕事に求める成長と挑戦の条件」https://jp.weforum.org/stories/2025/09/gen-z-are-competitive-job-market-ja/

 

Z世代は「扱いにくい世代」ではありません。

彼らの価値観を正しく理解し、それに対応した制度・文化・マネジメントを整備した企業では、Z世代は驚くほどの主体性と創造性を発揮します。

 

 

 ■まずは「現状診断」から始めませんか? 

貴社の人材育成・人事制度が、Z世代の価値観にどの程度対応できているかを無料でヒアリング・診断いたします。

 

1:若手の離職傾向・エンゲージメント低下の原因を特定

2:研修・育成プログラムの改善ポイントを明確化

3:人事制度改革の優先順位と具体的ロードマップを提示

お気軽にお問い合わせください。貴社の課題に合わせた戦略的アドバイスを提供いたします。

 

 

▼ ご相談・お問い合わせはこちら

 

 

 

 

 

  ※JOB Scope(ジョブスコープ)は、デフィデ株式会社の登録商標です。  


著者: JOB Scope編集部
新しい働き方、DX環境下での人的資本経営を実現し、キャリアマネジメント、組織変革、企業強化から経営変革するグローバル標準人事クラウドサービス【JOB Scope】を運営しています。