[JOBSCOPE]教授インタビュー解説

チームレジリエンスとは?困難に強いチームのつくり方|筑波大学・池田めぐみ助教

作成者: JOB Scope編集部|Oct 18, 2026, 6:01:57 AM

 

チームレジリエンスとは、チームが困難に直面してパフォーマンスが下がったとき、元の状態に回復したり、それ以前よりも成長したりしていくプロセスのことです。職場のレジリエンスを研究する筑波大学の池田めぐみ助教は、チームの困難はもはやマネージャー一人では解決できないほど難しくなっており、リーダーは「もっと人に頼っていい」と語ります。

「若手社員が成長しない」「離職してしまう」「どう付き合えばよいのかさえわからない」――若手の価値観が多様化し、職場の環境も変わるなかで、経営者や人事担当者、管理職の悩みは尽きません。そして、チームを率いる管理職自身も、重い責任と忙しさのなかで孤立しがちです。

本記事では、20代の若手社員の育成と職場のレジリエンスを研究し、共著書『チームレジリエンス』を著した池田助教へのインタビューをもとに、レジリエンスとチームレジリエンスの意味、それが今重要な理由、困難に強いチームをつくる3つのポイント、そして成長につながるストレス「チャレンジストレッサー」について解説します。

この記事でわかること

・レジリエンス/チームレジリエンスとは何か

・変化の激しい時代にレジリエンスが重要な理由

・管理職が困難を「一人で抱え込まない」ことの大切さ

・回復した後の振り返りと、ストレス下の「責任の押し付け合い」への備え

・成長につながるストレス「チャレンジストレッサー」とは

取材協力:池田 めぐみ 氏

筑波大学大学院 人文社会ビジネス科学学術院 ビジネス科学研究群 助教(取材時)。東京大学大学院学際情報学府博士課程修了。博士(学際情報学)。東京大学大学院情報学環 特任研究員、東京大学社会科学研究所附属社会調査・データアーカイブ研究センター 助教を経て、2024年4月より現職。主な研究テーマは、職場のレジリエンス、若手従業員の育成。共著書に『チームレジリエンス:困難と不確実性に強いチームのつくり方』(日本能率協会マネジメントセンター、2024年)。分担執筆として関わった書籍に『活躍する若手社員をどう育てるか』(慶應義塾大学出版会)、『ジョブ・クラフティング:仕事の自律的再創造に向けた理論的・実践的アプローチ』(白桃書房)など。

聞き手:JOB Scopeマガジン編集部

チームレジリエンスとは――困難から回復し、成長するプロセス

池田助教が主要な研究テーマとする「働くことに関わるレジリエンス」は、個人やチームが困難に直面したときの回復に関わる概念です。

チームは困難に直面すると、パフォーマンスが下がります。そこから元の状態に戻したり、それ以上に成長したりしていくプロセスを、チームレジリエンスと呼びます。一方、広い意味でのレジリエンスは、そうした回復に寄与する気質的なものも指します。回復のプロセスには、個人の持つ特性や能力も大きく関わると考えられています。

観点 個人のレジリエンス チームレジリエンス
対象 一人ひとりの働き手 職場のチーム
意味 困難からの回復に寄与する気質や力 困難で下がったパフォーマンスを元に戻したり、それ以上に成長したりしていくプロセス
例 仕事を失って落ち込んでも、前向きな人は比較的早く回復できる。自己肯定感が低いとなかなか回復できない エースが抜けるなどの困難に、メンバーの力を生かしてチームとして対処し、その後の教訓や備えにつなげる

出典:池田助教への取材をもとに編集部作成

例えば、仕事を失ってひどく落ち込んだとしても、とても前向きな人は比較的早く回復できます。反対に「私って駄目だ」と自己肯定感が低いと、なかなか回復できません。こうした回復に寄与する力も、レジリエンスと呼ばれます。

なぜ今、レジリエンスが重要なのか――予測しにくくなったキャリア

池田助教は、人が生きていくうえで困難に直面しないことはなく、それは今に限った話ではないかもしれないと前置きしたうえで、変化が激しい時代には、予想できない出来事に直面することが増えていると指摘します。

個人のレジリエンスでいえば、キャリアは昔よりも予想しにくいものになっています。例えば、保険会社が新たに介護事業を始め、保険関連の業務に従事していた人が急に介護の部署へ異動になる、といったことも起こります。環境の変化や新しい技術の発展によって、働く人が「思ったとおりにいかない」と感じる場面は増えています。

チームも同様です。自分が属する部署の仕事がなくなるかもしれない――そうした事態が昔よりも起こりやすくなっているからこそ、うまく回復するにはどうすればよいかを考えておくことが大切だと池田助教は語ります。

『チームレジリエンス』執筆の問題意識――途方に暮れるリーダーに寄り添う

池田助教は2024年5月、共著書『チームレジリエンス:困難と不確実性に強いチームのつくり方』(日本能率協会マネジメントセンター)を刊行しました。

きっかけは、大学を卒業して就職した友人たちの姿でした。ベンチャー企業でマネージャーを務めたり、大企業でも小さなチームのリーダーとして後輩の面倒を見たりしている友人の多くが、チームの悩みや困難に直面して途方に暮れていたといいます。そうした友人に寄り添える本を書きたい――それが執筆の動機です。博士号を取得し、論文以外のアウトプットにも挑戦できるようになった時期だったことも、執筆を後押ししました。

困難に強いチームをつくる3つのポイント

池田助教が同書を通じて伝えたいポイントは、出版後に実際に悩んでいる人たちと対話するなかで見えてきたことも含め、次の3つです。

ポイント 内容
① リーダーが一人で抱え込まない チームの困難は一人では解決できないほど難しくなっている。メンバーの得意・不得意や背景を生かし、チーム一丸で解決に向かう
② 回復した「後」を大切にする 問題を解決して終わりにせず、振り返って教訓を得る。同じ困難に再び遭遇しないよう、被害を最小化する準備をする
③ ストレス下の「押し付け合い」を自覚する 困難に直面すると一人ひとりがストレスフルになり、誰かのせいにし合って問題解決が止まりやすいことを意識する

出典:池田助教への取材をもとに編集部作成

① リーダーが一人で抱え込まない――「もっと人に頼っていい」

同書の出版後、池田助教が悩んでいる人たちと対話するなかでよく感じたのは、リーダーが独りで悩んでいるということでした。

管理職は誰もなりたがらず、「罰ゲーム化している」とまで言われるほど責任が重く、忙しい状況にあります。部下の価値観も昔とは変わり、困っている管理職は少なくありません。それでも責任感から、チームの問題を一人でどうにかしようと頑張りすぎた結果、気持ちが折れてしまう人が多いという印象を池田助教は受けたといいます(管理職が敬遠される理由については、坂爪洋美教授の解説記事でも紹介しています)。

チームの困難は、もはや1人では解決できないぐらい難しくなっています。(中略)頑張りすぎているマネージャーに対して、「もっと人に頼っても良いですよ」とか、「チームの仲間に頼って良いんです」と伝えたいと思っています。

――池田助教

「三人寄れば文殊の知恵」というように、チームにはさまざまな人が集まっています。メンバーの得意・不得意や背景を生かせば、本当は解決できることもあるのです。何でも一人でうまく解決しようと思いすぎず、皆の力を生かし、チーム一丸となって解決に向かうことを意識するのが大切だと池田助教は言います。

メンバーの力を生かすには、一人ひとりが何を得意とし、どんな役割を担っているのかを、リーダーだけでなくチームとして把握できる状態にしておくことが土台になります。

メンバーの役割とスキルを「見える化」し、チームで支え合う

リーダーが一人で抱え込まないチームをつくるには、メンバーの役割や得意分野、育成の状況を共有できる仕組みが役立ちます。DEFiDEの「JOB Scope」は、職務やスキル、評価・育成の情報を一元的に管理できるクラウドサービスです。

▶ JOB Scopeの資料を請求する

② 回復した「後」を大切にする――振り返りと備え

レジリエンスというと、困難から回復していくプロセス、つまり問題をうまく解決することに焦点が当たりがちです。しかし池田助教は、それだけではないと言います。

対処した後にしっかりと振り返って教訓を得ること、同じような困難に再び遭遇しないよう被害を最小化できる準備をしておくこと。困難が起きた「後」の取り組みが、実は大切なのです。

③ ストレス下の「責任の押し付け合い」を自覚する

チームが困難に遭遇すると、一人ひとりがストレスフルになり、問題を解決できなくなることも意識しておく必要があります。

例えばエースが抜けたとき、残ったメンバーはその仕事量を担わなければならず、「もっと頑張らなくては」というプレッシャーを感じます。一方で、エースが抜けたこと自体から「そもそもうちの組織はメンバーにプレッシャーをかけすぎているのではないか」と感じる人もいるでしょう。こうして、皆がストレス下で誰かのせいにし合うことが起こります。

「組織が悪い」「部下がまったく成長していない」と言い合っているだけでは、困難の解決は先送りされてしまいます。余裕があれば、互いに譲歩し、歩み寄りながら「何が問題なのか」を考えられるはずですが、実際に問題が起きるとそれができなくなりがちです。池田助教は、その点を自覚しておく必要があると指摘します。

成長につながるストレス「チャレンジストレッサー」とは

池田助教が注目するもう一つの研究キーワードが、チャレンジストレッサーです。

「若い頃の苦労は買ってでもせよ」とよく言われます。池田助教の周りにも、ベンチャー企業や外資系企業で若いうちから歯を食いしばって働き、活躍している人がいます。一方で、そうした会社で頑張りすぎて燃え尽きてしまった人もいます。「若いときに苦労はすべきなのか」「気持ちが折れてしまった人にどんな言葉をかければよいのか」――そうした関心から、チャレンジストレッサーに着目したといいます。

職場のストレスを生み出す要因(ストレッサー)はいくつもあります。2000年頃に行われた研究では、職場のストレッサーの中にも、成長に効くものとそうでないものがあると分類されました。このうち成長に効くものが、チャレンジストレッサーと呼ばれています。

分類 主な例 特徴
チャレンジストレッサー 時間的なプレッシャー、職務範囲の広さ、責任の重さ など 負荷が高く疲れることもあるが、取り組むなかで業務に必要なスキルが身につくなど、成長につながりやすい
ハインドランス・ストレッサー(妨げとなるストレッサー) 役割のあいまいさ、組織内の政治、職務の先行きの不安定さ など 成長や目標の達成を妨げ、意欲を下げやすい

出典:池田助教への取材をもとに編集部作成。ハインドランス・ストレッサーの例は、Cavanaugh et al.(2000)による分類をもとに編集部が補足

時間的なプレッシャーがある仕事や職務範囲が広い仕事、責任の重い仕事をすると、疲れてくたくたになってしまうかもしれません。それでも、ハードで責任の重い仕事に取り組むなかで、その業務に必要なスキルを身につけられると言われています。

ただし、チャレンジストレッサーも負荷であることに変わりはありません。頑張りすぎて燃え尽きてしまう人がいるように、成長の機会になるかどうかは、本人の状態や周囲の支え方によっても変わります。心身の不調が続く場合は無理をせず、産業医や専門家に相談することも大切です(燃え尽きを防ぐ職場づくりについては、久保真人教授の解説記事でも紹介しています)。

よくある質問(FAQ)

Q. チームレジリエンスとは何ですか?

A. チームが困難に直面してパフォーマンスが下がったとき、元の状態に回復したり、それ以前より成長したりしていくプロセスのことです。池田助教は、困難を解決するだけでなく、その後に振り返って教訓を得ることや、同じ困難に備えることも大切だとしています。

Q. 個人のレジリエンスとは何ですか?

A. 困難からの回復に寄与する個人の気質や力のことです。例えば、仕事を失って落ち込んでも、前向きな人は比較的早く回復できる一方、自己肯定感が低いとなかなか回復できないと池田助教は説明しています。

Q. なぜ今、レジリエンスが重要なのですか?

A. 変化が激しい時代には、予想できない出来事に直面することが増えているからです。池田助教は、キャリアが昔より予想しにくくなり、所属する部署の仕事がなくなる可能性も高まっているため、うまく回復する方法を考えておくことが大切だと述べています。

Q. 困難に強いチームをつくるポイントは何ですか?

A. 池田助教は、①リーダーが一人で抱え込まず、メンバーの得意・不得意や背景を生かすこと、②解決後に振り返って教訓を得て、被害を最小化する準備をすること、③ストレス下では責任を押し付け合いやすいことを自覚すること、の3点を挙げています。

Q. チャレンジストレッサーとは何ですか?

A. 職場のストレッサーのうち、成長に効くものを指します。時間的なプレッシャーや職務範囲の広さ、責任の重さなどが該当し、負荷は高いものの、取り組むなかで業務に必要なスキルを身につけられるとされています。

まとめ:困難は一人で抱えず、チームで回復し、学びに変える

  • チームレジリエンスとは、困難で下がったパフォーマンスを回復させ、それ以上に成長していくプロセス
  • 変化が激しく、キャリアや部署の先行きが予想しにくい時代だからこそ、回復の方法を考えておくことが大切
  • チームの困難はリーダー一人では解決できない。メンバーの得意・不得意や背景を生かし、もっと人に頼ってよい
  • 解決した後の振り返りと備え、ストレス下の押し付け合いへの自覚が、困難に強いチームをつくる
  • 時間的プレッシャーや責任の重さといったチャレンジストレッサーは成長につながる一方、頑張りすぎには注意が必要

では、若手一人ひとりが仕事にやりがいを感じ、自ら成長していくために、上司や会社は何ができるのでしょうか。後編では、仕事を自分好みにアレンジする「ジョブ・クラフティング」と、若手の離職を防ぐ関わり方を紹介します。

チームづくりと管理職の支援について相談する

管理職が一人で抱え込まず、チームで困難に向き合える組織をつくるには、役割の明確化や評価・育成の仕組みづくりも欠かせません。人事制度や人材マネジメントの課題について、DEFiDEに相談できます。

▶ 人材マネジメントについて相談する

▶ 後編:ジョブ・クラフティングとは?3つの種類と具体例、若手が仕事を「自分のもの」にするために上司ができること(内部リンク)

▶ インタビュー全文:今こそ問われる、若手との向き合い方とは(前編)(JOB Scopeマガジン)