日本企業は本当に弱くなったのか――。その通説に真正面から問いを投げかけたい。現場力や技術力という強みを持ちながら、なぜ成果や利益に結びつかないのか。東京理科大学大学院経営学研究科技術経営専攻(≒専門職大学院・社会人ビジネスククール)で教鞭を執る岸本太一氏は、「その背景には理論と実務をつなぐ『設計力』と『俯瞰力』の不足がある」と指摘する。研究者として、また実務家と向き合ってきた立場から語られるのは、OJTだけでは補えない学びの意義と、日本企業が取り戻すべき自信の源泉。理論を“血肉化”し、イノベーションを成果へと変える道筋とは何か。前編・中編・後編を通して、日本企業の未来を拓くヒントを探っていきたい。後編では、技術経営を学ぶ意義を聞いた。
【後編のエッセンス】
後編では、日本企業の低生産性の本質を「利潤吸引力」とその背後にある経営面の「設計力」の弱さに見いだす。現場の技術力や運営力は高いが、業界構造の中で利潤を確保する戦略設計やビジネスモデル構築が不十分なため、付加価値が海外に流出していると岸本氏は指摘する。イノベーションが「死の谷」に落ちる背景にも、戦略・組織・制度を設計する視点の欠如があるという。これを補うのが技術経営(MOT)のビジネススクールであり、設計力と俯瞰力を座学と実践研究で養うことが、日本企業の潜在力を成果へ転換する鍵だと説く。
【後編のキーメッセージ】
①低生産性の本質は利潤吸引力を生む設計力の不足にある
②技術力だけでは不十分、戦略とビジネスモデルの設計が成果を決める
③設計力と俯瞰力を養う座学が日本企業の潜在力を解放する
一口に生産性と言っても、生産性は活動の総合指標なので、格差を生み出す原因については、様々な要因が考えられます。ゆえにこの種の議論をする際には、何が主な原因であり、何が原因ではないのかを、明らかにすることが重要となります。今回はこの点に関する私の見解を、製品・サービス・コンテンツを「つくる効率」と、つくられた製品・サービス・コンテンツの「魅力度」、それらの「販売価格」、それらをつくる際に必要な原材料やサービス等を外部から購買する際の「購買価格」に限定し、お話ししたいと思います。
まず「つくる効率」ですが、こちらついては日本企業の効率がドイツ企業に比べて低いかというと、MOTの講義や企業研修、研究におけるフィールドワーク等で、多くの現場に日常的に触れている私の感覚としては、必ずしもそうではない気がします。日本企業の現場では、相変わらず「節約」や「カイゼン」がキーワードであり、活発に行われている印象があります。
次に「魅力度」ですが、こちらについては、R&D部門で顧客のニーズを殆ど考えない等の問題点は、確かに存在します。しかし、創られた新製品の大半に「魅力」がないかというとそうではなく、日本企業のつくる製品やサービス、コンテンツに関しては、新規のものだけでなく、既存のものや伝統的なものにも「魅力度」の高いものは、結構あります。分かり易い例で言えば、アニメは海外でも大人気ですし、おもてなしも喜ばれます。
問題は「販売価格」と「購買価格」です。ここに日本企業の生産性を下げる大きな原因があると、私は考えています。「魅力度」に見合った「販売価格」になっておらず、安値で買い叩かれている。逆に購買においては、提供される原材料やサービスとは不釣り合いな高額の「購買価格」で買わされてしまっている。だから、「つくる効率」や「魅力度」では仮に遜色がなくても、生産性の格差が生まれてしまう、という理屈です。
以上の問題は、集約すると「利潤吸引力の弱さ」と表現できます。企業は価格を介して取引相手と利潤分配の綱引きをしています。販売価格が高くなれば利潤は顧客から自社に移り、低くなれば顧客へと移ります。逆に購買では、価格が下がれば利潤は自社に流れ、上がれば購買相手に流れます。以上のような取引における利潤を吸引する力の弱さが、日本企業の主要な課題であり、弱点の一つであると、私は捉えています。
それでは、なぜ日本企業は利潤吸引力が弱いのか。その主要な原因は、利潤を吸引する仕組みを作るところに、換言すると、経営や戦略面の「設計力」にあるのではないかと思います。この点を再び、イノベーションプロセスの分業構造を例に用い、説明しましょう。
先ほどもお伝えしたように、日本企業は世界のイノベーションプロセスにおいて、重要な活動を担当しております。基礎設計や様々な部品や活動の統合は、たしかに米国企業が行うことが多いです。しかし、例えば iPhone を創るためには、iPhone の部品や材料、それらの製造装置や加工工程などを、現存するものからiPhoneに適するものへとアレンジしなければいけません。それらのアレンジの多くを担当しているのが、日本企業であり、そのアレンジを通じて量産を整流化することに、日本企業は非常に長けています。一方、作り方や設計が確立されたものは、中国などに移っていきます。そうした分業体制ができているので、かなり貢献できるポジションにあると思っています。
ただ、その貢献に見合うお金を取れているかというと、対価を十分に取るための仕組みや構造は不十分であると言えます。この仕組みや構造を考える際に参考になるフレームワークが、経営戦略論の有名な学者であるマイケル・E・ポーター氏が1979年に発表した5フォースです。5フォースに基づいて考えた場合、顧客側にスイッチ先(=自社以外の代替購入先)があり、自社側にスイッチ先(=その顧客以外の代替販売先)がないと、取引における交渉力は顧客の方が強くなるので、利潤の多くは顧客に吸引されてしまいます。購買取引においても同様です。
裏を返せば、企業は利潤を吸引するためには、自社にはスイッチ先が十分にあり、取引相手にはスイッチ先があまりない業界構造をつくる必要があり、そのためには、そういった業界構造の構築を念頭に置いて、事業戦略やビジネスモデルを精緻に設計する必要が出てきます。しかし、これは「言うは易く行うは難し」です。そして、日本企業の多くは、製品や工程の設計に関しては注力して精緻に行う一方で、こちらの設計については、あまり考えていなかったりします。
なので、よい製品やサービスはできるものの、その利潤の多くは海外企業に取られていくみたいな、そんな構造になってしまっています。そしてその結果として、生産性の分子である付加価値があまり日本企業には落ちないで、低生産性に繋がっているのではないかというのが、私のざっくりとした見解です。
衰えてはいないと思っています。ただ、やっていることが本当の意味で最大のパフォーマンスに繋がっているかというと疑問です。米国企業をはじめとした海外の企業に比べて、成果に繋がっている度合いは、相対的に低いと言わざるを得ません。
やはり、日本企業の一つの課題は、設計力が足りないことにあります。製品設計や工程設計はしっかりしていますけれども、戦略を設計する、ビジネスモデルを設計する、あるいは企業の内部においても、組織構造や評価制度などの新しい制度や仕組みを設計したり、再編するといった営みについては、注力も能力も足りていないのが、現状かと思います。
最近よく私は、研修や講演で「経営=運営×設計」という公式を使っているのですが、マネージャーの仕事は大まかには、制度や仕組みを設計し実装するという活動と、その後上手く運営をしていくという活動の、二つに分けることも可能です。日本企業が得意なのは、どちらかというと、作られた制度の中でどうやって回していくかという運営です。そこの部分については極めて長けています。特に大企業のミドルの人たちには、非常に長けている人たちが多いと思います。
その一方で、「開発している技術や製品のビジネスモデルをどうするのか」や「状況の変化に対応して組織構造をどう変えていくのか」といった設計については、経営陣や企画部門の仕事であり、上から降ってくるものだと考え、そもそも自分の仕事だと思っていないケースが頻繁にあります。また、設計の創造や再編が現状を突破するために重要なことだと、あまり捉えていない気もします。それらの設計を考える地頭については、潜在的に保有している方が多いにもかかわらずです。
私はある大手企業のR&Dセンターでも戦略研修を手掛けることがあったりします。例えば、その受講生である技術者や研究者とやりとりしていると、ビジネスモデルに関しては何も考えていないことに気づきます。 とにかく技術を開発しているわけです。だから、ものすごくレアな技術が沢山溢れています。
しかし、技術面で言うと極めて長けているものが沢山出てくるものの、技術設計だけをしていては、社会実装にはつながっていきません。ビジネスモデルを設計したり、それを実際に回していくための組織を設計したりなど、経営に関する色々な設計作業をやらないと、やはり世の中に普及するようなイノベーションにはなかなかつながっていかなかったりします。
だから、「死の谷」(研究開発から事業化、さらに市場での定着に至るまでのプロセスに立ちはだかる大きな障壁)や「ダーウィンの海」(新製品や新サービスが市場に投入された後、強力な既存製品や競合他社との激しい生存競争に晒され、事業として定着・成功するまでに立ちはだかる困難な障壁)にどんどん落ちているわけです。そして、その大きな理由の一つが、経営面の設計をしていない点にあることを、まだ理解していません。設計をすることが重要だと思っていないし、そもそも自分の仕事だと捉えていなかったりします。
そういう人たちがものすごく多いです。なので、活動は活発にしているものの、なかなか成果にはつながらないわけです。すべての企業とは言いませんが、米国企業はそこの部分は結構しっかりと押さえており、ある程度上手く設計をしている気がします。
例えば、Googleもそうだと思います。検索エンジン事業では、収益を検索するユーザーからではなく広告から得る収益モデルを採用していますが、事業発展の背景には、こういったビジネスモデル面の巧みな設計も、少なからず貢献しています。
日本企業は技術力や運営力は高いものの、イノベーション設計力や戦略構築力が足りないために、大した成果につながっていない可能性があります。世界に貢献はしていても、利潤は吸引できていないという課題も、根っこは同じです。それらの原因の一つは、こういうところにあるのではないかと思っています。
一つは、今話した設計力を学ぶ、そこの部分にあると思います。OJT でずっと現場学習をしていても、十分に学べないのはそこです。日々、運営して回していかなければいけないので、どうしても新しい制度や仕組みを作ることであったり、そもそも制度や戦略の構成要素になぜ手を入れなければいけないのか、何を変えればよいのかを、時間をかけて考えられなかったりします。それらは、現場で課長さんや部長さんたちが、実務の中だとなかなか学べない部分だと思います。
逆に言うと、そういった設計力を深く学べるのがビジネスクールであり、理科大MOTです。理系や技術の世界でも、例えば建築で言えば、OJT だけで建築の設計図を描く人はほとんどいません。実務に入る前に、まずはどこかしらの一級建築士のテキストなどから基礎理論を学んで、それを使って設計をするはずです。経営や戦略の設計も同じです。最初のとっかかりとして、設計力を学ぶ上では座学は有効だと思いますので、そういうことを学びに来る場として理科大MOTは有用だというのが、一つの見解です。
実際に設計力の向上を求めて入学された中小企業の社長さんが、私のゼミの修了生の中におられます。その方は、自分で創業した会社を30年ぐらい経営しており、60歳になる前に理科大 MOT に来られました。私の授業のある回で、「経営者の仕事は、代表者、リーダー、設計者の3つに分かれる」という内容が書かれたテキストを読んできてもらい、議論をしたことがありました。その際、その方は、「『代表者』と『リーダー』は社長業をやっていれば学ぶことができる。でも、『設計者』の能力は、社長業を30年近くやってきても、その中で学ぶことはなかなかできなかった。だから MOT に来た」とおっしゃっていました。
この発言は、他の経営者の方にも、あるいはミドルマネージャーの方にも、当てはまる内容ではないかと思います。なので、そこがポイントになってくる気がします。
もう一つ学べるところは何なのかというと、経営を俯瞰する力です。それがもう一つの、座学で深く学べることなのではないかと思っています。
以前、『エコノミスト』というビジネス誌のコラムで書いたことがあるのですが、日本企業のミドルマネージャーが失敗する原因は、個々の仕事を巧みにできないところにはありません。視野狭窄に陥って失敗するパターンが多いと言えます。
例えば、ある課で最優先に解決すべき課題が、組織構造にあったとします。しかし、その課の課長が営業出身であった場合、その課長さんは、マーケティングに関連することばかりを、自分のマネジメントの仕事だと思って注力しがちです。その結果、組織構造改革という本来取り組むべき仕事が放置され続け、逆に、既にうまく回っていたマーケティングを変えてしまい、改善ではなく改悪となってしまう。極端な例で説明すると、視野狭窄的な失敗とは、このような失敗です。
ではなぜ日本のミドルは、視野狭窄的な失敗に陥り易いのか。その主な原因は、OJT偏重と現場昇進制という慣行にあります。現場昇進制だと、昇進でも現場におけるプレイヤーとしての活躍がどうしても重視されるため、自身が経験した現場の仕事の延長で、マネージャーの仕事を狭く考えてしまいがちになります。
その傾向に拍車をかけるのが、OJTへの偏重です。OJT だけだと、学ぶ対象が自身の現場経験に限定されるため、視野が狭くなり、例えば、財務畑の人は財務に関連することばかりに、開発出身者は開発関連のことばかりに、マネジメントでも注力しがちとなります。この傾向は、先輩や上司を見て学ぶ手法を取り入れても、解消しません。むしろ、増強されます。なぜなら先輩や上司も、同じ慣行の中で育ち、マネージャー職に就いた人達だからです。
無論、OJTや現場昇進制にも、先ほどお話しした通り、経営の仕組みには何事にも一長一短があるので、弱点だけでなく利点もあります。現場想像力を備えたマネージャーが増える点は、その一例でしょう。ただ、やはりマネジメントの特徴的な点は、ジェネラリストのスペシャリスト的な職という点にあります。人事、財務、組織構造、モチベーション向上、顧客や外注先やそれに該当する社内の他部門とのやりとりなど、様々なマネジメントのボタンをきちんと俯瞰的に見て、その中で欠けているところはどこだと見極めて、それぞれの打ち手につなげていく。そこにマネジメントの本質の一つがあります。
座学であれば実務経験に縛られずに、マネジメントの各ジャンルとその基礎的内容を、とりあえず俯瞰的に学べるので、そういう観点からしたら座学で学ぶ意味があると思っています。OJTを無くす必要はありませんが、偏重は解消し、座学を併用する必要はあると考えます。
理科大 MOT の最大の特徴は、やはり学生さんの構成にあると思っています。より具体的に言いますと、まず年齢がかなり高いです。学生の平均年齢は42.5歳くらいであり、実務経験が豊富な方が通われています。
次に、こちらの方がより重要な特徴だと思いますが、それは多様性です。MBA と比べると、非常に多彩な方が通われています。MBA だと学生の構成が、どうしても営業や経営企画、あるいは業界でいうと銀行や商社など、いわゆる文系卒の方々が就職する部門や業界に偏りがちです。その一方で理科大 MOT の場合、理系出身者が数多く入学されることもあり、実に多様な部門や業界の方々が来られております。部門で言えば、例えば、大手電機メーカーの中央研究所で AI の開発しているプロジェクトリーダーや、大手食品メーカーのポテトチップス工場で工場長をしている方など、R&Dや生産部門の方が数多く通われております。業界の方も、ものづくりや IT 系を中心に色々な産業界の方が入学されております。その一方で文系出身者も、3~4割ぐらいはいます。以上の結果、まさに会社や経済の縮図的な状況になっているのが一つのポイントです。
私の講義の特徴は、理論を“血肉化”するディスカッション型講義にある、と先ほど(中編で)解説しました。ディスカッションのクオリティーや方向性は、講師が何を教えるかより、学生が誰なのかによって大きく左右されます。理科大MOTの学生は、職種も職位も業界も実に多種多様です。しかも、どの方も実務経験が豊富であり、その道のプロフェッショナルが数多くおられます。そのような贅沢なメンバー構成の中で、日々議論ができ、授業を受けられる点に、他のビジネススクールに対する最大の差別化要因があります。
多種多様な社会人学生に囲まれて受講する授業では、自ずと必然的に知らない間に経営とは何かを俯瞰的に考えなければいけなくなります。実際に講義中は、「開発の人はそういう考え方するのか」「営業の人の考え方のポイントはここなのか」という気づきの連続です。そういう意味では、同じ理論やケースを使っても日々学べる度合いはMBAよりも高まりますし、経営俯瞰力をつけようとする方にとっては、最適な学生構成になっているというのが、理科大MOTの一つの強みだと思っています。
設計力を養成する面でも、理科大MOTには強みがあります。理科大MOTは専門職大学院であり、いわゆる修士課程ではないので、修士論文はマストではありません。しかし、自社や自部門、所属業界などが今抱えている経営課題を、1年から1 年半かけてゼミで研究し、その成果を基に修了ペーパーを執筆する、という演習科目を必須科目として採り入れています。
この演習では、会社や自分の部門等の本質的な課題が何で、どう解決するのかを、かなりの時間をかけて調査・分析・考案をし、その蓄積を構造化した論理的なペーパーへと仕上げることになります。ゆえに、経営面の設計力を養う絶好の実習機会にもなり、また、この演習で構築した内容を、実務で実際に実装を試みるケースもよくあります。
そういう意味では、修士論文でアカデミック色の強い論文を書くよりも、例えば、「自社のこういう制度はこうした理屈で成り立っていて、そこにはこういう弱点があり、その弱点を解消するためには、この手を打つとこういう風になる」といった実務に関連する内容を、じっくり考えて言葉や理屈にしていく作業を、より深く体験できるわけです。それは、まさに私が先ほど指摘した日本企業の弱点である設計力を養成することにつながっていきます。この点にも理科大MOTの特徴は存在し、私が行っているゼミも、この特徴を活かす形で進めています。
実は、理科大MOTでは今年5月から、プレジデント社とコラボする形で、『MOT Core Sessions』というオンライン開催の入門コースを開講します。理科大MOTの本科コースは2年間なので、通うのにかなりのエネルギーを使いますが、こちらは入門コースなのでライトであり、気軽に技術経営の座学を体験できます。ご興味のある方は、下記のURLをぜひクリックしてみてください。
https://pri.president.co.jp/mot
私は経営学の研究を通じて、現場の人たちをかなり調査してきました。また、今もビジネススクールの中で日々中小企業の経営者の方や、人事の方とも接しています。その経験を通じた私自身の所感としては、日本企業の経営陣や管理職の方々は捨てたものではないと思っています。本当に能力も技術もお持ちです。しかも、愚直なのできちんと言われたことを日々運営されています。そういった面でポテンシャルは、測り知れないと思っています。
問題は、そのポテンシャルを活かしきれていないことです。OJT だけでは勿体ないです。持ち前の現場力・技術力・運営力に、俯瞰力と設計力が加わったら、鬼に金棒になり、ポテンシャルは更に開花すると信じています。
OJT をきちんとされていること自体は、高く評価されるべきことですし、企業活動の基盤の形成にも大きく貢献しております。そういう意味では、現場や技術、運営にまつわる活動に関しては、自信を失わずに引き続き頑張って頂いて、自信を持ってもらいたいです。
しかし、それらを世の中に実装し、より大きな利益や社会貢献に繋げていくためには、今までの延長線上ではなかなかできない部分があります。その現状を打破する試みの一つとして座学みたいなものに、まずは簡単にでも触れ合って頂いたらいかがでしょうか。経営の座学は、日本企業の欠点を埋めるために有効です。それが私からの経営者や人事責任者の方へのメッセージとなります。
―岸本先生、貴重なアドバイスをありがとうございました。
【編集後記】
本インタビューを通じて強く感じたのは、「日本企業に実力がないのではなく、実力を活かす設計が不足している」という視点だった。現場力や技術力に自信を持ちながらも、それを利益や社会実装へと結びつける構造を描けていない。その課題は、大企業だけでなく中小企業にも共通しているのではないだろうか。OJTで磨かれる運営力に、俯瞰力と設計力が加わることで、企業はもう一段高いステージへ進めるはずだ。本記事が、自社の強みを再定義し、次の一手を構想するきっかけになれば嬉しい。
岸本 太一 氏
東京理科大学大学院
経営学研究科
技術経営専攻 講師
※肩書は取材時点。
2026年4月から准教授に昇任
平成14年一橋大学商学部卒業。平成17年一橋大学大学院商学研究科修士課程研究者養成コース修了。平成20年一橋大学大学院商学研究科博士後期課程修了。博士(商学)。同年一橋大学大学院商学研究科特任講師。平成21年東京大学ものづくり経営研究センター特任助教。平成23年より敬愛大学経済学部准教授、東京大学ものづくり経営研究センター特任研究員。平成26年より現職。著書に『中小企業の空洞化適応』(共編著、同友館。平成26年度〈第39回〉商工総合研究所 中小企業研究奨励賞〈経営部門〉を受賞)、『サービスイノベーションの海外展開』(共著、東洋経済新報社)、『日本型ビジネスモデルの中国展開』(複数章執筆担当、有斐閣)など。