[JOBSCOPE]教授インタビュー解説

バーンアウト(燃え尽き症候群)とは?熱心な人ほど燃え尽きる理由|久保真人教授

作成者: JOB Scope編集部|Oct 15, 2026, 12:24:59 PM

 

バーンアウト(燃え尽き症候群)とは、仕事に高い理想を持って打ち込んできた人が、期待していた見返りを仕事から得られず、強い喪失感とともに意欲を失ってしまう状態です。同志社大学の久保真人教授は、これを「仕事に対する失恋」にたとえ、仕事に熱心な人ほど陥りやすいと語ります。

ウェルビーイングやワーク・エンゲージメントへの関心が高まる一方で、「燃え尽き」「バーンアウト」という言葉を目にする機会も増えています。やりがいを持って働いていたはずの社員が、ある日突然意欲を失い、休職や離職に至る――そんな事態を防ぐには、バーンアウトを正しく理解することが欠かせません。

本記事では、看護師・介護士・教員などのバーンアウトを長年研究してきた組織心理学者の久保教授へのインタビューをもとに、ウェルビーイングが注目される背景、バーンアウトの定義と歴史、ワーク・エンゲージメントとの関係、バーンアウトが看護師や教員に多い理由、そしてキャリアの節目としてのバーンアウトについて解説します。

この記事でわかること

・ウェルビーイングが注目される背景と、生産性との関係

・バーンアウト(燃え尽き症候群)とは何か――定義と歴史

・ワーク・エンゲージメントとバーンアウトが「同じ延長線上」にある理由

・バーンアウトが看護師や教員に多い理由――仕事への「失恋」

・バーンアウトをキャリアの節目として捉える考え方

取材協力:久保 真人(くぼ まこと)氏

同志社大学 政策学部・総合政策科学研究科 教授(取材時)。1983年京都大学文学部卒業。1999年京都大学大学院文学研究科で博士(文学)取得。大阪教育大学教育学部助手、同志社大学政策学部助教授などを経て、2006年より現職。専門は組織心理学で、看護師・介護士・教員などヒューマンサービス職のバーンアウト(燃え尽き症候群)、感情労働、働きやすい組織と個人のウェルビーイングを研究。著書に『バーンアウトの心理学――燃え尽き症候群とは』(サイエンス社、2004年)など。

聞き手:JOB Scopeマガジン編集部

ウェルビーイングが注目される背景

久保教授は、ウェルビーイングが注目される背景には人的資本の考え方があると見ています。若い世代では転職が一般的になり、転職組から企業を担う人材も出てくるようになりました。社会人経験を積んだ人は、社名ではなく「自分を生かせる場所かどうか」で会社を選びます。

そのため企業には、仕事と生活のバランスがとれ、自分の能力を伸ばしていける環境が求められています。仕事中心の価値観ではなく、その人の生活をトータルに見てサポートする――それが、ウェルビーイングという言葉が広がっている理由だと久保教授は捉えています。

  内容
ウェルビーイングの定義 定まった定義はない。もともとはWHO(世界保健機関)が健康の定義に用いた言葉で、身体や心の健康だけでなく、社会的な状態も含めて総合的に健康を考える
久保教授の捉え方 仕事と生活の両面が充実している状態(ワーク・ライフ・バランスに近い意味)
組織との関係 個人のウェルビーイングが実現できる会社には優秀な人材が集まり、生産性も上がる

出典:久保教授への取材をもとに編集部作成

バーンアウト(燃え尽き症候群)とは?

久保教授はもともと心理学の出身で、ストレスを研究していました。1990年ごろ、看護師の集団離職が社会問題になったことをきっかけに、看護師、介護士、教員などのヒューマンサービス職のストレスを研究するようになります。そこで、個人では対処しきれない問題が組織にあることに気づき、バーンアウトが起こりやすい組織・起こりにくい組織の研究を続けてきました。

時期 バーンアウトをめぐる動き
1974年 米国の心理学者ハーバート・フロイデンバーガーが「バーンアウト」の概念を提唱
当初 看護師や教員など、人にサービスを提供するヒューマンサービス職の問題として研究が始まる
2000年以降 対象が職業一般に広がる。高いモチベーションを持っていた人の意欲が急に低下し、離職・転職に至る状態もバーンアウトと呼ばれるようになる
2022年 WHOの国際疾病分類(ICD-11)が発効し、バーンアウトが初めて項目として盛り込まれる(病気ではなく、職業上の現象として位置づけ)

出典:久保教授への取材をもとに編集部作成

バーンアウトは一種の不適応状態であり、WHOの分類でも病気(疾病)とはされていません。ただし、バーンアウトが深刻になると、離職や退職につながったり、うつ病などの病気に至ったりすることがあります。最近では、著名な芸能人やスポーツ選手がバーンアウトを理由に活動を休止するなど、一般の認知度も高まっています。

※心身の不調が続く場合は、自己判断せず、産業医や専門の医療機関に相談することが大切です。

ワーク・エンゲージメントとバーンアウトは「同じ延長線上」にある

一般に、バーンアウトの対になる概念はワーク・エンゲージメント(仕事への活力・熱意・没頭)だとされています。仕事にのめり込み、いわゆる「ゾーン」に入って働く人はエンゲージメントが高く、意欲を失うバーンアウトとは正反対に見えます。

しかし久保教授は、バーンアウトの予備軍は、実はワーク・エンゲージメントの高い人だという仮説を持っています。仕事にのめり込んでいるときに何か歯車が狂ったとき、バーンアウトは起こるからです。

  見た目 実際に起きていること
エンゲージメントが高く、バーンアウトも高い人 バリバリ働いている 仕事に熱心な分ストレスも高い。海外の追跡調査では、この層の離職率が最も高かった
バーンアウトしにくい人 ― 仕事だけの価値観で生きておらず、仕事以外の価値も持ち、生活全体をバランスよく捉えている

出典:久保教授への取材をもとに編集部作成(海外の追跡調査は久保教授の紹介による)

ワーク・エンゲージメントとバーンアウトは、見た目は対の概念でも、同じ延長線上にある――それが久保教授の考えです(ワーク・エンゲージメントの詳細は、髙橋潔教授の解説記事でも紹介しています)。

エンゲージメントが高い職場ほど、その裏にあるストレスの兆しにも目を向ける必要があります。

エンゲージメントの高さと、その裏にあるストレスを見逃さない

エンゲージメントが高い社員ほど、バーンアウトの予備軍になりうる――そうであれば、熱意だけでなく、仕事と生活のバランスやストレスの兆しも合わせて把握することが大切です。DEFiDEの「生成AIワークバリュー・スコア分析」は、生成AIで従業員の属性や組織の特性に合わせた質問を作成し、組織の状態を迅速にきめ細かく可視化します。

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バーンアウトは「仕事に対する失恋」――看護師や教員に多い理由

久保教授は、バーンアウトを「仕事に対する失恋」にたとえて説明しています。

  失恋 バーンアウト
ベースにあるもの 熱烈に恋した相手から見返りがなかった喪失感 これだけ頑張ったのに仕事から何も得られなかった喪失感
起こりやすい人 相手に過度な思い入れや理想化を持つ人 仕事に高い理想を持ち、理想化している人
その後 代わりの相手を見つけやすい 仕事は簡単に代わりを見つけにくく、ダメージが大きい

出典:久保教授への取材をもとに編集部作成

看護師や教員を目指す人の多くは、仕事に非常に高い理想を持って入職してきます。仕事に真面目で献身的な人が多いからこそ、バーンアウトが起こりやすいのだと久保教授は考えています。

バーンアウトはキャリアの「節目」にもなる

では、バーンアウトは起きないほうがよいものなのでしょうか。久保教授は、失恋が自分に合ったパートナーを見つけるプロセスの一つであるように、バーンアウトもキャリアにおける一つの節目だと言います。

仕事に期待や思いを持つ真面目な人なら、実際の仕事との間にギャップがあれば、大なり小なりバーンアウトに似た状態を経験します。そこから自分と仕事との距離の取り方や、仕事への関わり方を学んでいくのです。長く高いレベルの仕事を続けている人に話を聞くと、必ずといってよいほどバーンアウトに近い経験を持ち、その中で仕事に何を期待し、どう関わるかを学んでいるといいます。

もちろん、深刻になれば離職や病気につながることもあります。だからこそ、重症化を防ぐ組織の支えが重要になるのです。

よくある質問(FAQ)

Q. バーンアウト(燃え尽き症候群)とは何ですか?

A. 仕事に高い理想を持って打ち込んできた人が、期待した見返りを仕事から得られず、強い喪失感とともに意欲を失ってしまう状態です。1974年に米国の心理学者フロイデンバーガーが提唱した概念で、久保教授はこれを「仕事に対する失恋」にたとえています。

Q. バーンアウトは病気ですか?

A. WHOの国際疾病分類(ICD-11)にはバーンアウトが項目として盛り込まれていますが、病気ではなく職業上の現象として位置づけられています。久保教授も一種の不適応状態だとしています。ただし深刻になると、離職やうつ病などにつながることがあるため、心身の不調が続く場合は産業医や医療機関への相談が大切です。

Q. ワーク・エンゲージメントが高ければバーンアウトは起きないのですか?

A. 久保教授は、むしろワーク・エンゲージメントの高い人がバーンアウトの予備軍だという仮説を持っています。海外の追跡調査では、エンゲージメントもバーンアウトも高い人の離職率が最も高かったといいます。両者は対の概念に見えて、同じ延長線上にあるという考え方です。

Q. バーンアウトはなぜ看護師や教員に多いのですか?

A. 久保教授は、看護師や教員を目指す人の多くが仕事に非常に高い理想を持ち、真面目で献身的であるためだとしています。仕事を理想化しているほど、期待したものが得られなかったときの喪失感が大きくなり、バーンアウトにつながりやすいといいます。

Q. バーンアウトしにくい人の特徴は何ですか?

A. 久保教授は、仕事だけの価値観で生きるのではなく、仕事以外の価値も持ち、自分の生活全体をバランスよく捉えている人がバーンアウトしにくいという仮説を示しています。

まとめ:熱心な人ほど、燃え尽きないための支えを

  • ウェルビーイングが注目される背景には人的資本の考え方がある。生活全体を支える企業に人材が集まる
  • バーンアウトは、仕事に高い理想を持つ人が見返りを得られず意欲を失う状態。WHOでは病気ではなく職業上の現象とされる
  • ワーク・エンゲージメントとバーンアウトは同じ延長線上にあり、熱心な人ほど予備軍になりうる
  • バーンアウトは「仕事に対する失恋」。理想が高く献身的な看護師や教員に多い
  • バーンアウトはキャリアの節目にもなるが、重症化を防ぐ組織の支えが欠かせない

後編では、バーンアウトの重症化を防ぐ上司や同僚の支え、「やりがい搾取」の組織が最も危ない理由、感情労働という考え方、人的資本経営とジョブ型雇用への見解、そして仕事以外の世界を持てる職場の大切さについて解説します。

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▶ 後編:バーンアウトを防ぐ職場とは?「やりがい搾取」の危うさと、上司のひと言・感情労働への理解(内部リンク)

▶ インタビュー全文:やりがいを搾取する組織が最も危ない(前編)(JOB Scopeマガジン)