[JOBSCOPE]教授インタビュー解説

チームワーキングとは?最強チームをつくる3つのOS|立教大学・田中聡准教授

作成者: JOB Scope編集部|Oct 15, 2026, 11:11:00 AM

 

チームワーキングとは、チームを「動き続け、変わり続ける存在」と捉え、目標設定やフィードバックといったチームの行動を、一度きりではなく現在進行形で続けていく考え方です。立教大学の田中聡准教授は、優れたチームをつくるには、行動の手順(アプリ)を変える前に、チームの捉え方(OS)を変える必要があると語ります。

前編では、立場や権限に関わらず全員がリーダーシップを発揮する「全員発揮型リーダーシップ」と、経営人材を育てる5つの経験を紹介しました。後編では、そうした一人ひとりのリーダーシップを束ねる「チーム」と、それを支える人事について考えます。

本記事では、田中准教授へのインタビューをもとに、優れたチームをつくるための「OS」と「アプリ」、チームワーキングの考え方、田中准教授らが1,514名の人事パーソンを調査した「シン・人事の大研究」で見えた3つの課題、そして経営者と人事が一緒に会社の未来をつくる重要性について解説します。

この記事でわかること

・チームづくりの「OS」と「アプリ」の違い

・チームを「動的」に捉えるチームワーキングの考え方

・ゴールホールディング、フィードバッキングなど「〜ing」の実践

・人事パーソンが疲弊する3つの課題(新規課題解決の沼、エンドレスワーク、社内ぼっち)

・経営者と人事が一緒に会社の未来をつくるために

取材協力:田中 聡(たなか さとし)氏

立教大学 経営学部/大学院経営学研究科 准教授(取材時)。1983年山口県生まれ。慶應義塾大学商学部卒業後、株式会社インテリジェンス(現・パーソルキャリア株式会社)に入社。大手総合商社とのジョイントベンチャーで事業部門を経験した後、株式会社インテリジェンスHITO総合研究所(現・株式会社パーソル総合研究所)の立ち上げに参画し、リサーチ室長・主任研究員・フェローなどを務める。東京大学大学院学際情報学府博士課程修了、博士(学際情報学)。2018年より現職。専門は人的資源管理論・組織行動論で、人材開発・チーム開発を研究。著書に『経営人材育成論』(東京大学出版会)、『チームワーキング』(共著、日本能率協会マネジメントセンター)、『「事業を創る人」の大研究』(共著、クロスメディア・パブリッシング)など。

聞き手:JOB Scopeマガジン編集部

優れたチームをつくるには「OS」のアップグレードが必要

田中准教授は、立教大学経営学部の中原淳教授との共著『ケースとデータで学ぶ「最強チーム」のつくり方 チームワーキング』(日本能率協会マネジメントセンター)で、チームづくりを「OS」と「アプリ」にたとえて説明しています。

  アプリ(行動原理) OS(チームの捉え方)
意味 どういう行動をとればよいか そもそもチームをどう見立てるかという認識
例 目標の設定、役割の分担、フィードバック、成果のモニタリング チーム視点、全員リーダー視点、動的視点
よくある問題 チームワークの本の多くはアプリの話 OSが変わっていないため、本どおりにアプリを入れても職場が機能しない

出典:田中准教授への取材、中原淳・田中聡『チームワーキング』をもとに編集部作成

チームの「OS」を構成する3つの視点

視点 内容
チーム視点 チームの全体像を常に捉える
全員リーダー視点 自らもリーダーとして、当事者意識を持ってチームの活動に貢献する
動的視点(最も根っこにあるもの) チームを「動き続けるもの、変わり続けるもの」として捉える

優れたチームというと、多くの人はFCバルセロナや、ラグビーワールドカップで活躍した日本代表など、特定のチームの理想の状態を「スナップショット」で思い浮かべがちです。しかし、どんなチームも内部を観察すると、人と人の有機的な関わりの中で複雑に変化しています。チームは静的なものではなく、目まぐるしく動き、変わり続ける「やっかいな存在」なのです。

チームのコンディションは右肩上がりではない

チームは一緒に過ごす時間に比例して関係性やパフォーマンスが右肩上がりに高まる、と思われがちですが、実際には常に上昇と下降を激しく繰り返しています。リーダーから見えているチームの状態と、メンバー一人ひとりが見ている状態がまったく違うこともあります。だからこそ、リーダーだけに舵取りを任せるのではなく、メンバー全員が「私からはこう見える」「あなたからはどう見えますか」と、チームの景色を互いに共有し、認識をアップデートし合うことから始める必要があると田中准教授は言います(全員がリーダーシップを発揮する考え方は前編で紹介しています)。

チームワーキングとは?――すべてを「現在進行形」で

一般的なチームづくりの本には、「まず目標を掲げて伝え、次に役割を分担し、環境を整え、評価する」というステップが書かれています。しかし、実際の職場ではステップどおりに進むことはまずありません。

どれほど素晴らしいキックオフ・ミーティングをしても、1週間もたてば多くのメンバーはその内容を忘れています。翌日からは、会社のビジョンより目の前の顧客の課題のほうがはるかに大事だからです。目標は、設定した瞬間から忘れ去られていく運命にある――だから、「目標設定の次は役割分担」というステップ論は現実にそぐわないのです。

目標は言い続けなければならず、役割も変わり続けるため、マネジメントし続けなければなりません。すべての行動は同時並行で続き、完了形は存在しない。だからこそ、チームのあらゆる行動を現在進行形(〜ing)で捉えることが大切だと田中准教授は言います。

チームワーキングの実践 内容
ゴールホールディング 的確な目標を設定することより、目標を常に握り続けることが大切
フィードバッキング 一度フィードバックして終わりではなく、互いに繰り返しフィードバックし続ける
タスク・ワーキング 動きながら、解くべき課題を探し続ける

出典:田中准教授への取材をもとに編集部作成

チームの状態が常に変わる以上、メンバーが今チームをどう見ているかを定期的に確かめることが、チームワーキングを実践する手がかりになります。

チームの「今の状態」を、データで共有する

チームのコンディションは常に上下しています。メンバー一人ひとりが仕事や職場をどう感じているかを定期的に把握し、チームで共有することが、チームワーキングを実践する手がかりになります。DEFiDEの「生成AIワークバリュー・スコア分析」は、生成AIで従業員の属性や組織の特性に合わせた質問を作成し、組織の状態を迅速にきめ細かく可視化します。

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人と組織の課題を解決するには、人事パーソンが変わる必要がある

世の中には「人事部とは何か」「これからの人事部はどうあるべきか」という議論があふれています。しかし田中准教授は、それらは抽象的で解像度の低い問いだと言います。人事部という行為主体がいるわけではなく、そこにいるのは一人ひとりの人事パーソンだからです。問うべきは「人事部がどうあるべきか」ではなく、「人事パーソン一人ひとりが仕事にどう向き合うか」なのです。

「エンゲージメントを高めよう」と言う人事が疲弊している

田中准教授の研究室には、「ワーク・エンゲージメントのサーベイで、この部門のスコアが低くて気になる」と相談に来る人事の人がいます。ところが「こちらの部門のほうがもっと低いですね」と尋ねると、「実はそれは人事部なんです」というやりとりが頻繁にあるといいます。

「エンゲージメントを高めよう」「働きやすさが大事」と発信している人事パーソン自身が、そうした働き方をできていない。人と組織の課題は特定の部門に限らないのに、課題解決の優先順位はいつも事業部門が先で、人事は最後――。人事パーソンが元気に、生き生きと仕事に取り組めなければ、人と組織の課題は解決できないというのが、田中准教授らの問題意識でした。

そこで田中准教授は中原教授とともに、人事総合メディア「日本の人事部」の協力を得て「シン・人事の大研究」というプロジェクトを立ち上げ、2022年に1,514名の人事パーソンを対象に、働き方や仕事の状況、学び方、キャリア観を調査しました。その結果は、書籍『シン・人事の大研究:人事パーソンの学びとキャリアを科学する』(ダイヤモンド社)にまとめられています。

調査で見えた人事パーソンの3つの課題

調査から、人事パーソンを取り巻く仕事環境の特徴は、次の3つに集約されることがわかりました。

課題 内容
① 新規課題解決の沼 人的資本経営、ジョブ型、リスキリング、DX、ダイバーシティ、ウェルビーイング、ミドル・シニア活用、働き方改革など、難易度が高く複雑な新しい課題に常に追われている。他の職種と比べた人事パーソンの特徴
② エンドレスワーク 締め切りや納期がない仕事が多く、何が達成されればOKなのかを決めにくい。終わりが見えないことがストレスになり、燃え尽き(バーンアウト)につながることもある
③ 社内ぼっち そうした状況にありながら、周りからは「やって当たり前」と見られる。人事の仕事は他部門から理解されにくく、相互理解が進まないまま、ボタンの掛け違いが生まれている

出典:田中准教授への取材、「シン・人事の大研究」調査(2022年、人事パーソン1,514名)をもとに編集部作成

経営者と人事が一緒に、会社の未来をつくる

最後に田中准教授は、中小・中堅企業の経営者や人事責任者に向けて、これからは人と組織の時代であり、人的資本経営やジョブ型といった言葉に踊らされないでほしいと語ります。

課題とは、自社のあるべき姿と現状とのギャップから生まれるものです。隣の会社が何をしているかは気になるかもしれませんが、他社比較から課題は生まれません。自社がどの方向に進みたいのかを、人事責任者と経営者が膝を突き合わせて対話し、腹落ちしたあるべき姿と現状とのギャップを、一緒に考えていく必要があります。

「経営者としてはもっと人事を頼りながら、一緒になって会社の未来を作っていく、そういうまさにチームワークが経営レベルで求められていると思います。」

――田中准教授

「経営としてこうなったから、来年までにこれだけ人が足りなくなる。採用をよろしく」というコミュニケーションではなく、あらゆるところに人と組織が関わる以上、経営者の悩みに本当に寄り添う人事にならなければならない。経営者と人事のチームワークこそが、これからの会社に求められていると田中准教授は語ります。

よくある質問(FAQ)

Q. チームワーキングとは何ですか?

A. チームを「動き続け、変わり続ける存在」と捉え、目標設定やフィードバック、課題探しといったチームの行動を、一度きりで終わらせず現在進行形(〜ing)で続けていく考え方です。田中准教授と中原淳教授の共著『チームワーキング』で提唱されています。

Q. チームづくりの「OS」と「アプリ」の違いは何ですか?

A. アプリは目標設定や役割分担、フィードバックなど「どう行動するか」という行動原理で、OSは「そもそもチームをどう見立てるか」という認識です。田中准教授は、多くのチームワークの本はアプリの話が中心ですが、OSが変わらなければアプリを入れても職場は機能しないとしています。OSの根本にあるのは、チームを動的に捉える視点です。

Q. 優れたチームをつくるには何から始めればよいですか?

A. 田中准教授は、チームのコンディションは右肩上がりではなく常に上下しているため、リーダーだけに任せず、メンバー全員が「私からはこう見える」と互いのチームの見え方を共有し、認識をアップデートし合うことから始めるべきだとしています。

Q. 人事パーソンが疲弊する原因は何ですか?

A. 田中准教授らが1,514名の人事パーソンを調査した結果、常に新しく複雑な課題に追われる「新規課題解決の沼」、締め切りがなく終わりが見えない「エンドレスワーク」、他部門から理解されず「やって当たり前」と見られる「社内ぼっち」という3つの特徴が見えてきました。

Q. 経営者と人事はどのように連携すべきですか?

A. 田中准教授は、他社比較ではなく、自社のあるべき姿と現状とのギャップから課題を考えるべきだとしています。経営者と人事責任者が膝を突き合わせて対話し、人事は経営者の悩みに寄り添い、経営者は人事を頼りながら一緒に会社の未来をつくる、経営レベルのチームワークが求められています。

まとめ:チームを「動き続けるもの」と捉え、経営と人事もチームに

  • チームづくりは、行動の「アプリ」を変える前に、チームの捉え方である「OS」を変える必要がある
  • OSの根本は、チームを動き続け、変わり続ける存在と捉える「動的視点」
  • チームワーキングでは、目標を握り続け(ゴールホールディング)、フィードバックし続け、課題を探し続ける
  • 人事パーソンは「新規課題解決の沼」「エンドレスワーク」「社内ぼっち」という3つの課題を抱えている
  • 他社比較ではなく自社のあるべき姿から課題を考え、経営者と人事が一緒に会社の未来をつくる

チームは一度つくれば完成するものではなく、動き続け、変わり続けるものです。現場のチームも、経営者と人事のチームも、現在進行形で関わり続けることが、人と組織の時代を生き抜く力になります。

人と組織の仕組みを、実際の画面で確かめる

メンバー一人ひとりの役割や目標、成長を見える化し、チームで共有し続けられる仕組みは、チームワーキングの土台になります。DEFiDEの「JOB Scope」では、実際の画面を見ながら説明を受けられる個別オンラインデモを行っています。

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▶ 前編:全員発揮型リーダーシップとは?VUCA時代のリーダー像と、経営人材を育てる5つの経験(内部リンク)

▶ インタビュー全文:これからは、人と組織の時代。チームワークが経営レベルで求められている(後編)(JOB Scopeマガジン)