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前東京大学公共政策大学院客員教授/元農林水産省事務次官 奥原氏のインタビュー/農政改革と組織論に学ぶ―責任と覚悟で切り拓く変革リーダーの条件(前編)

作成者: JOB Scope編集部|2026/04/8

日本は自給率の低い島国であり、食料や石油など多くを海外に依存している。「米は有り余っているから心配ない」との認識は、令和の米騒動によって“幻想”に過ぎなかったことが露呈した。「今後、日本の農業はいかなる方向に進むべきか」「農業政策を担うリーダーはいかにあるべきか」。農業が経済の一分野である以上、ビジネスパーソンにとっても看過できない重要な論点である。
こうした問題意識のもと、本メディアでは元農林水産事務次官・奥原正明氏にインタビューを行った。議論は、日本農業の構造改革の実態から、組織を動かすリーダーシップの本質にまで及んだ。ドイツ統一期の経験を原点に自由化を志向した農政改革は、一定の成果を上げた一方で、農地や流通をはじめとする構造的課題をなお残している。また、DX時代においては、環境変化を的確に捉えた意思決定と、抵抗を乗り越える覚悟が不可欠である。さらに、農業を経済全体の中で再定位し、企業および国民の関与を促す視点も提示される。本特集は、停滞する日本に求められる「責任あるリーダー像」を多角的に提示するものである。前編では、奥原氏が挑んだ農政改革の成果などを聞いた。

 

【こんな方に、ぜひ読んでいただきたい】 
①自社の成長戦略や変革に限界を感じ、責任ある意思決定や適材適所の人事で組織を再構築したいと考える経営者
②部下の抵抗やハラスメント配慮の中で指導に迷い、組織を動かすリーダーシップや判断力を高めたい管理職
③将来リーダーとして成長したいが何を学ぶべきか模索し、主体的に判断力や視座を高めたい若手社員

【前編のエッセンス】 
奥原氏は、ドイツ統一期の経験から日本農業が統制的で非効率な構造に近いと認識し、自由経済型への転換を一貫して推進してきた。改革により、プロ農家の集約や生産拡大は進んだ一方、農地の分散や流通の多段階構造、輸出の伸び悩みなど課題は依然大きいと指摘する。また改革には抵抗勢力が存在するため、マスコミとの連携も重視した。さらに、日本の組織停滞の要因として「事なかれ主義」と責任の所在の不明確さを挙げ、リーダーには責任感と決断力が不可欠だと強調。人材育成では、上位者視点で判断を積み重ねる訓練の重要性を説く。 

【前編のキーメッセージ】 
①日本農業は統制的構造から脱却し自由化へ進展したが、農地分散や流通の非効率など本質的課題は未解決で改革は道半ばにある。
②日本の停滞は事なかれ主義と責任不在に起因し、組織を動かすには明確な責任を負うリーダーの決断が不可欠である。
③リーダー育成には上司の判断を観察し、「自分ならどうするか」と考え続ける習慣が重要。長期的に大きな能力差を生む。

01ドイツ統一体験が示した日本農業の課題と自由化改革への原点  

2016年から18年まで農林水産事務次官をお務めになられました。まさに、農政改革を推進されたリーダーでいらっしゃいました。今、振り返られて改革はどこまで成し遂げられたとお考えですか。

私は、農林水産省に40年近く勤めましたが、1989年から92年まで外務省に出向して在ドイツ大使館に勤務しました。

私が赴任した時は、まだ西ドイツの大使館でしたが、その年の11月にベルリンの壁が崩れ、翌年90年10月3日に東西ドイツは統一しました。統一によって、大使館の所管領域は東ドイツにも広がり、私は、西ドイツの農業と東ドイツの農業の両方を見る機会に恵まれました。 

その時、私が思ったことは「日本の農業は西ドイツより東ドイツに近い」ということでした。 西ドイツは農業者が自由に農業経営を展開し発展しているのですが、東ドイツは計画経済(政府が経済活動全体を管理・統制する経済体制)の下で、農業者は作業員にすぎず、生産性も低くて停滞していました。 

そうした状況を見て、「日本の農業政策を西側の自由主義経済の政策に変えていかないと、いつまで経っても日本農業は発展できない」と思いながら、私はドイツから帰ってきました。  その後、私は課長・局長になり、そして次官になりましたが、一貫して考えていたことは、日本の農業政策を自由主義経済の政策に変えて、日本農業を発展させていくことでした。そのため、意欲と能力のある農業者が自分の能力を十分に発揮でき、日本農業を発展させていける環境をどう作るかを考えて、色々な仕事に携わってきました。プロ農家専用の政策融資の創設、プロ農家に農地を集積・集約化するための農地制度の改革、プロ農家にメリットがなくなっている農協制度の改革、農家にも消費者にもメリットがある流通構造の改革などです。

「どこまで効果があったのか」と言われますと、効果があった部分とまだまだ不十分な点が混在しています。高齢化に伴って減少してきたとはいえ、兼業農家の数は依然として多いのですが、本気で農業に取り組んでいるプロ農家(法人形態のところもあれば大規模な家族経営もあります)は着実に増えていて、そのシェアは確実に拡大しています。プロ農家は日本の農地全体の6割を使うところまで来ていますし、農産物の販売金額でいえば、8割ぐらいをプロ農家が生産する状態になっています。

ここまで進んできましたが、このプロ農家も農地の面積合計は大きいものの、多数の小さい圃場(作物を栽培する田畑)が点在していて、十分な生産性の向上につながっていません。農地が分散していれば、機械も効率的に使えませんし、ドローンで農薬を散布することもできません。農地の分散錯圃(一農家が所有する農地が複数の小区画に分散し、他人の農地と入り組んで存在している状態)を解消して、プロ農家がまとまった農地を効率よく使えるようにすることは、日本農業の発展を考える上で最大の課題です。それには農地バンク法(所有者不明農地や遊休農地を担い手へ貸付する農地中間管理機構の法定化を定めた法律)の改正などの抜本的な対策が必要になります。

農産物の流通改革については、次官時代に様々な取り組みを行いましたが、実効はあまり上がっていません。米を例に取ってみても、農業者から、農協三段階(地域・県段階・全国段階)、卸売業者を経て、小売業者や外食に流れるという多段階の流通がいまだに大勢を占めています。米の流通は完全に自由化されているにも関わらず、旧食糧管理法時代の統制経済の流通ルートが残っているということです。

この流通をもっと簡素化して流通コストを下げていくことが、生産者にも消費者にもメリットがありますが、この改革は、国が方針を示すだけではダメで、農協や流通関連企業等の民間経済主体が取り組まない限り、成果は上がりません。これも残された大きな課題で、2024年夏以来の米価の異常な高騰もこの問題と絡んでいます。 

農産物の輸出も残された課題です。欧米諸国は、農産物の輸入も多いのですが、輸出も相当大きく、そのため食料自給率は日本ほど低くありません。

安倍内閣から輸出の旗を振ってきた結果、輸出額は2025年で約1兆7000億円まで拡大してきましたが、その多くは水産物や加工食品で、日本で生産余力のある米は300億円ぐらいしかありません。

輸出拡大には、農地の集積・集約化による生産性の向上と農協・輸出関連企業などの民間経済主体が真剣に取り組むことが不可欠で、まだやらなければいけないことがあります。 

そういう意味で、残された課題はまだたくさんありますし、安倍内閣終了後は改革が後退しているところも多く、非常に心配しているというのが、今の状況です。

02成果と限界が交錯する農政改革―集約進展と残る構造問題 

奥原先生は、新書や「農林水産法研究」などの執筆にも数多く携われておられます。執筆に意欲的な理由をお聞かせください。 

私が最初に書いた著書は『農政改革 行政官の仕事と責任』(日本経済新聞出版社)でした。これは、自分が色々なことを考え工夫しながら政策改革を手掛けてきましたので、退官後、政策改革の考え方・進め方やそのための組織運営の仕方を後輩に伝えておく必要があると思って書いたものです。

その後、マスコミの農業報道を見ていて、非常に表面的な内容のものが多く、これでは一般の国民の方は農業の実情も今後の政策のあり方も理解できないのではないかと思いました。このため、一般国民の方、あるいは経済界の方にも農業の実情や問題点、どうやったら農業が発展するのかを分かっていただくことが重要であると思い、いくつかの著書を出しています。

奥原先生の著書を拝見しても、マスコミとのリレーションを大切にされていらしたことが伝わって来ます。

その通りです。 それは、現役時代から強く意識してやってきました。特に大きな改革をしようと思えば、色々なところに抵抗する人たちがいるわけです。農協を含めてさまざまな既得権団体がありますし、それをバックにしている政治家の方も沢山います。放っておくとなかなか改革が進まなくなってしまいますから、マスコミにきちんとした報道をしていただいて、改革の応援をしてもらうことは極めて重要です。

03日本組織の停滞要因は「事なかれ主義」と不明確な責任構造

その中から、今回は3冊の著書に着目したいと思います。まずは、『組織はリーダー次第 ― 失敗する9タイプ 』(信山社新書)です。こちらのサイトの読者には中小企業の経営者が多数います。そもそも、奥原先生がこの本をなぜ執筆されようとお考えになられたのか。経緯をお聞かせください。 

私が最初に書いた『農政改革 行政官の仕事と責任』(日本経済新聞出版社)の後半は組織論になっています。大きな改革は一人ではできませんから、改革を進めるためには、自分の組織を動かすことは必須ですし、農林水産省在職中も人事担当の秘書課長を長く務めるなど、組織の活性化には相当注力してきました。この経験を踏まえて、どうやって組織を活性化し、組織を前向きに動かしていくのかについて書いてみました。おかげさまでこの部分もかなり注目を浴び、「この部分に関して講演してほしい」という依頼もいただきました。

私自身、在職中も退官後も、色々な民間の方と接触を重ねてきて、色々なリーダーの方を見てきました。そして、組織はリーダーが誰なのかによって全然違ってくると痛感していますので、「この部分だけにフォーカスして一冊の本を書いてみよう」と思ったわけです。

そもそも、奥原先生からご覧になられて日本の組織リーダーはどう評価されますか。

日本のリーダーといっても色々な方がいます。立派な方もいれば、そうではない方もいますので、一概には言えません。ただ、日本経済がこれだけ地盤沈下が進んでいて、競争力で見ても世界どころか、アジアの中でもどんどん順位が落ちています。これは、やはりリーダーの在り方が大きく影響していると思っています。 

総じていえば、日本では「事なかれ主義」のリーダーが多いのではないかと思います。今、時代は大きく変わってきています。経済・社会・技術・国際情勢を含めて色々なことが大きく変われば、仕事の仕方も大きく変えていかなければいけません。にもかかわらず、従来の仕事の仕方を変えようとしない「事なかれ主義」の経営者、リーダーが多いのではないかと思います。行政機関も全く同じです。

改革するには抵抗もあって大変ですが、「従来通りのことを続けていけば、そんな苦労はしなくてよい」と考えて改革を怠ってきた結果が、日本の地盤沈下ではないかと思っています。  

日本では本当の責任者・リーダーが誰であるか分からないということが結構あります。高度経済成長期のように、やるべき目標が決まっているのであれば、ゴール目掛けて皆で突き進んでいけば良いので、リーダー不在でも、あるいはリーダーが誰でも良かったのかもしれません。

しかし、今は、時代が大きく変わって、世界の中で生き残る、勝ち抜く競争をしています。そんな時には、責任をもって組織を牽引するリーダーがいなければいけません。

その人がきちんと情報を収集し、的確な決断をして、組織を動かすことができなければいけないのです。しかし実際には、これがなかなかできない状態が続いているのではないでしょうか。バブル崩壊の後遺症で、守りに徹するような経営を続けたことも影響していると思います。

また、日本の場合、社長という肩書であったとしても、会長や相談役がいて、本当に権限を持っているとは言えないケースもあります。これでは、失敗した時も誰が悪いのか分からない、責任を誰が取るかも分からないということになります。  

企業だけではありません。役所もそうです。例えば、事務次官になったとしても、上には政治家としての大臣がいますし、与党の幹部の人たちが強い影響力を持っていますから、強い意思を持っていなければ、責任ある仕事はできません。

こうした状況の中で、誰がその政策や方針を決めたのかがわからないという状態になってしまうのが、一番良くありません。結局、責任者がいない、リーダーがいないという状態になって、状況に流されていくだけになってしまいます。 

海外組織のリーダーとは、何が違うのでしょうか。

例えば、外交交渉一つを取ってみても、日本は非常に組織的にやっていて、下から交渉を積み上げて、最後にトップが出るというケースが多いと思います。

先ほどお話した通り、私は東西ドイツ統一時にドイツ大使館に赴任した経験があります。ベルリンの壁が崩れてから1年もたたずにドイツ統一が実現できましたが、当時のドイツの首相と外相は毎週ワシントンを訪問して、米国の大統領・国務長官と調整することで、ソ連や欧州各国を牽制して、統一に向けた作業を強力に進めていました。

大きな問題であれば、トップがいきなり交渉に出ることが必要で、それが問題の解決にも、スピードアップにもつながるということです。責任者・リーダーは、その問題ごとにその状況を見極めて、誰に交渉させるか、あるいは自分が最初から交渉するかなど、仕事の進め方を責任を持って判断することが必要になります。

04真のリーダーに必要な責任感と判断力、育成に不可欠な思考習慣 

その違いを踏まえてお聞きします。日本人も外国人、海外のリーダーのようになるべきだとお考えですか。それとも、日本人は日本人ならではの良さを磨いていけば良いのでしょうか。 

やはり、しっかりと責任を持って判断しなければリーダーとは言えないと思いますし、組織も発展していけません。その意味では、海外のリーダーに習うべきです。判断が間違っていた場合に、リーダーはきちんと責任を取らなければいけませんし、責任を取る覚悟があってはじめて、的確な判断ができるようになると思います。

リーダーには、どのような資質が求められるのでしょうか。

私が執筆した『組織はリーダー次第 ― 失敗する9タイプ 』(信山社新書)では、失敗するリーダーのタイプを9つ挙げています。タイプ1では資質に欠けるリーダーについて述べているのですが、その中でリーダーに求められる資質を色々と書いています。

具体的には、責任感や問題意識と改革意欲、時代感覚、闘争心と警戒心、熱意・情熱、人を見る目、目的の自覚、私心の排除、説明能力、心身の健康管理、孤独・批判に耐える精神力です。この中で一番大事なのは、私は責任感だと思います。

自分がその組織の将来、役所で言えば国の将来になるのですが、会社で言えばその会社の将来に対して責任を持っているという、この自覚が一番大事です。この会社の浮沈を決めるのは自分の判断だという思いを強く持つこと。そこが一番大事なポイントだと思います。  

ですから、「自分の任期の間だけ事なかれで済めば良い」というのはダメですし、退任時の挨拶で「大過なく終えることができました」みたいなことを言おうと思っている人は、リーダーになってはいけません。時代はどんどん変わっていきます。それをむしろ先取りするような形で、将来展望を拓くような政策方針、会社の経営方針をしっかりと打ち出していく経営者が必要だと思います。

リーダーには、判断力や交渉力、情報収集力などのスキルも欠かせません。それらをリーダー候補生の段階でどう身に付けていけば良いのでしょうか。

基本的には、その会社なら会社、役所なら役所に入った段階から、やはりきちんと勉強していくことが重要です。本や新聞を読んで視野を広げていくことも大切ですが、一番大事なことは自分の上司の行動をきちんと見ることです。しかも、それについて自分だったらどう判断するかという思いを持ちながら、上司の判断を見ることが大事だと思います。  

組織に入った当初は、平の職員・社員で上に上司がたくさんいます。省庁で言えば課長や局長、次官、大臣がいますし、会社でも課長、部長、本部長、役員など様々な名称の上司がいます。その人たちが色々なテーマについて、どういう判断をしていくのかを常に観察して、自分がそのポジションにいたらどう判断するだろうかと考える。「自分ならこうやったのではないか」「ここはこうしたはずだ」などと、色々なことを考えていくことが非常に大事だと思います。 

漫然と毎日の仕事をこなすだけでなく、上の人たちがやっていることを見て、自分なりの判断を積み重ねていく。別にその判断が間違っていても良いのです。重要なのは、自分自身で判断することです。そうした経験を積み重ねていくと、あの時の自分の考えは間違っていて、上司の判断が正しかったと思うことも出てきますが、それでよいと思います。自分の考えを常に持ちながら軌道修正を徐々にしていく。こうした取り組みをすることが大事だと思います。 これによって、判断力がだんだん養われていきます。これを10年積み重ねたらすごく差がつきます。これをやった人、やらない人では天と地との違いが生まれるはずです。

担当者、平社員の視線だけで仕事をするのではなく、上のポジションの人たちをウォッチしながら「自分だったらどうするか」「どう判断するか」と色々考え行動してみる。そういう姿勢が大事だということですね。

平社員でも、仕事をしていれば、自分の直属の上司がどう反応するかは考えざるを得ません。書類を持っていった時にどう反応するかを考えないと上手く対応できませんから。ですが、もっと上の上司のことも見ないといけません。その一つも二つも先のポジション、できればトップもです。「自分が今トップだったらどう判断するのか」ということを考える訓練が必要になってきます。

さすがに、いきなり「自分がトップだったら」という視点を持つのはハードルが高そうな気もします。最初は難しくても、続けていくことが重要な気がしてきました。

最初は、十分な判断ができなくて当たり前です。まだ経験も知識も足りないわけですから。

そうですよね。

そういう努力をすることが重要です。「なぜ、トップはこういう判断をしたのか」と色々調べてみることも必要になってきます。そういう努力の積み重ねが大事なのです。

大企業であれば、直接トップと会う機会はなかなかないかもしれませんが、アニュアルレポートや社内報、各種取材記事などを通じて、考え方の一端を知ることができます。ましてや、従業員数が数百人ぐらいの中小企業であれば、トップと顔を合わせる機会もあるはずです。逆に言うとトップの考え方を理解しやすいし、その上で自分はどう判断・行動すれば良いのかを思いめぐらしやすい環境にいる気がします。

逆に言うと、上司の方も自分が部下から見られているという意識を持つことが大事になってきます。本人はなかなか気づきにくいかもしれませんが、部下は上司の背中を常に見ています。部下の方から、「ああいう上司にはなりたくない」と思われないようにしなければいけません。

05部下は上司の背中を凝視している。その視線に応える仕事ぶりが大切

奥原先生は農林水産省で幹部になられた時には、「自分が部下からどう見られているか」を気にされたわけですね。常に「俺の背中を君たちは見たまえ」的な仕事を心がけたということでよろしいですか。 

部下に難しい指示を出しながら、「上司自身は何もやらないではないか」と思われたら、部下はついてきません。難しい話であればあるほど、まずは上司がしっかりと動く。その仕事ぶりを見せて、それを踏まえて部下にも仕事をしてもらう。これがなければ、組織は動かないと思います。

残念ながら、実際にはリーダー全員が奥原先生のようなスタイルの方ばかりではなかったりします。

すべてが理想通りに行くわけではありませんが、リーダーはそういうことを心掛けなければいけないと思います。そうでなければ、リーダーとして成果を上げることはできないと思います。

少なくとも、事務次官になられるくらいの方々は、「俺の背中を見て君たちも頑張ってくれ」というタイプが多いのでしょうね。

次官になれるかどうかは、運の問題もあります。「トップになりたい」と思って仕事をすることが必ずしも良いこととは限りません。そのために失敗をおそれて、やるべきことをやらなくなる可能性もあります。むしろ、局長などの幹部になったら、「やるべきことをやりきる」「ここで失敗したら失職するかもしれないが、それでも構わない」ぐらいのことを思ってもらいたいと思います。ある程度の幹部になったら、覚悟を持って取り組んでいくことが大事なのです。そういうリーダーが多くなることが日本の発展には必要だと思います。

奥原 正明

前東京大学
公共政策大学院
客員教授/
元農林水産省事務次官  

1955年生まれ。79年東京大学法学部卒業、農林水産省入省。在ドイツ大使館一等書記官(東西ドイツ統一時)、大臣秘書官、大臣官房秘書課長等を経て、2011年経営局長(5年間在任)、16年農林水産事務次官就任、18年退官。この間に、農地の集積・集約化のための農地バンク制度の創設、農協改革、林業改革、水産業改革などに取り組む。その後、東京大学公共政策大学院客員教授を2026年3月まで務める。
『農政改革 行政官の仕事と責任』『農政改革の原点 政策は反省の上に成り立つ』(いずれも、日本経済新聞出版)、『組織はリーダー次第 ― 失敗する9タイプ』『農業政策は消費者のためにある』(いずれも、信山社)など著書多数。

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