>悪用厳禁!禁断の経営技術とは(中編)
日本人は生真面目な民族だ。それが、プラスに出る場合とマイナスに出る場合にわかれる。イノベーションの創出に向けてはどうか。過去は違ったかもしれないが、ここ数十年では間違いなくマイナス面が大きい。今持っている技術力を活かして、新たな市場を切り拓けないかと律儀に考え続けているものの、突破口を見出せないでいるのが実情だ。一方、世界を見ると、日本人には信じられないほどのダイナミズムで新市場を創出している企業家がいる。実際、非合法取引/非合法市場で生まれた製品やサービスを洗浄し、合法化してしまっている例が数え切れない。そうした経営技術に日本人経営者やビジネスパースンも着目すべきだと提言する経営学者がいる。東京都立大学大学院 経営学研究科 准教授の高橋 勅徳氏だ。名付けて、「イ・リーガル・アントレプレナーシップ」。どのような概念なのか、『イ・リーガル・アントレプレナーシップ 法と倫理のはざまを漂う企業家精神』(同文館出版)の出版を記念して3回シリーズでインタビューしてみた。中編では、「イ・リーガル・アントレプレナーシップ」の時代性を紐解く。
【中編のエッセンス】
中編では、イ・リーガル・アントレプレナーシップがなぜ「今」必要なのかが具体例を通して掘り下げられる。SNS上に広がるマニュアル販売や闇バイト、恋愛詐欺事件は、元手ゼロ・低リスクという点でライフスタイル起業と構造的に酷似している。問題は善悪ではなく、法と倫理をどう理解し、どのように合法へ転換するかという「技術」の欠如にある。ギラギラ系企業家は黒と白を正確に把握したうえで、グレーゾーンを白へ寄せる設計を行う。一方、日本ではその感覚が不足し、若者は無自覚に違法へ、管理職は過剰な遵法で競争力を失っている。本編は、その致命的なギャップを埋めるための実践的思考を提示している。
【中編のキーメッセージ】
①非合法ビジネスの構造は、合法市場を生むヒントの宝庫であり、排除ではなく理解が必要である。
②重要なのは勇気や発想力ではない。法と倫理を読み解き、合法化へ導く技術こそが経営力である。
③黒と白を知らない者はグレーを扱えない。無知はリスクであり、知識は最大の防御である。

01なぜ今イ・リーガルなのかという時代的必然
時代が私に書かせたと。そのセリフを何かの機会に言ってみたいですね。
本当にこの本は、今このチャンスしかないと思ったので、少し無理してでも書き上げました。実は、出版社が、「この企画を取り上げますので、是非お願いします」となった時に私は、本当に驚いたのですが、その話が決まったのが去年の4月ぐらい。その時は、『ライフスタイル起業~ちょっと働き、ほどよく稼いで、ごきげんに生きる。』を半ばぐらいまで書いて、その 二ヶ月後ぐらいに初稿が上がってくるタイミングでした。その時に、イ・リーガルの企画が決まったわけです。私の中では年明けぐらいの1月か2月ぐらいに初稿が上がるスケジュールかなと思っていたら、編集担当者から「年内に出してください」と言われてしまったんです。これは、もう完全に出版社の都合でした。
なので、結構大変だったというのが、私の中ではありました。ただ、このチャンスを逃すことはできなかったので、去年は本当に無理をしました。
かなりのハードワークであったのではと想像できます。読者により一層関心をもってもらうために、素朴な質問をさせてください。そもそも、『イ・リーガル・アントレプレナーシップ』とは何かを教えていただけますか。なぜ、この時代にこのコンセプトというか、キーワードに着目する意味があるのか。この本を読む価値がどこにあるのかにもつなげてご説明いただけませんか。
例えばの話ですが、実は今若い人ほどイ・リーガルとリーガルに対して敏感になっているなと感じる時があります。それは何かというと、若い人って、私が大学や大学院で付き合っている大学生や30代ぐらいまでの人たちを見ると、SNSを通じて闇バイトのような非合法取引を日々発見したり、危うく巻き込まれそうになっているので、非常に敏感になっているように思えます、特にグレーゾーンにあるのが、マニュアル販売型の商法ですね。私も今回の本の中で書かせていただきますけど、「投資マニュアルを一部1000円で買いませんか」みたいな商売をSNSやネットを使って、合法でも非合法でもスレスレを狙って商売をしようとしている人たちが、若い世代が手軽にはじめられるネットビジネスとして非常に目立ち始めているという現実が実は一つあります。
それを見たときに、私はこれをどう評価したら良いのかと、ここ数年ずっと思っていました。それこそライフスタイル起業の観点から見ると、「こうやれば成功できますよ」というスタイルの商売は、投資や健康、美容で非常に目立ちます。まさに、人の欲望とコンプレックスから、お金を引き出すビジネスです。そういうマニュアルをネット上で販売するというのは、元手はほぼゼロです。売れた瞬間に利益が確定して、失敗してもリスクがありません。まさに、ライフスタイル起業の好例として取り上げても良いかもしれないものです。ただ、そこで交わされている内容は、完全に著作権法違反であったり、健康や美容系になると薬事法に違反なんじゃないのかなとか、薬事法の観点からも違反しているのではないかという事例が結構連発しています。しかも場合によっては、違法なものが合法として売られているケースが目立ちます。
このマニュアル商法の一歩先を踏み越えてしまうとどうなるかっていうと、「頂き女子りりちゃん」の事件(2020年代前半に起きた恋愛詐欺事件に繋がっていきます。「頂女子りりちゃん」を名乗る女性が、マッチングアプリで知り合った男性たちから総額約1億5千万円を騙し取り、その方法を"魔法のマニュアル"として販売し、逮捕された)になってしまいます。パパ活マニュアルを売って、数千万の荒稼ぎに成功しただけでなく、模倣犯まで生み出してしまいました。
時はかなりマスコミも騒いでいましたね。
あれをどこまで悪と見るのか、善と見るのか。だけど、彼女たち、あるいはああいう非合法なビジネスの仕組みだけ抜いていくと、実はそのまま私が提唱しているライフスタイル起業のビジネスっていうもののやり方と、そのまま一緒になってしまいます。元手を掛けず、取引が成立した段階でクロージング、収益が確定する。辞めたとしてもリスクがほぼない。そういったビジネスをやっていくのが、実は今 SNS 上でグレーゾーンのビジネスで一番増えています。それが今の、非合法ビジネスのトレンドであったりします。
このような非合法ビジネスの原因として、プラットフォームとなっているSNSは叩かれる傾向が非常に高いです。だけど同時に、マニュアル商法のビジネスは非合法のものから、マーケティング手法の一つに昇華されたものまで幅があり、そこから生み出される経済効果や市場規模を考えていくと、うまく仕組みだけを抜き取って合法的にビジネスをやっていくと、かなりの市場規模になることが用意に計算できます。
マニュアル商法に限らず、SNSの仕組みを利用してマニュアルを提供するビジネスとしてはYouTuber もそうですし、オンラインサロンもそうですが、プラットフォームビジネスが今大きく伸びて稼いでいる彼らのビジネスモデルを、イ・リーガルなアントレプレナーシップと表裏一体な存在なのだとして注目していくと、非常に興味深いを側面が浮かび上がると思います。実は新しいもの、イノベーションが起きる時は、どこかで合法と非合法、倫理と非倫理というか、善悪の狭間のところで満たされない、もやっとしたニーズを形にして商売していく人たちが最初に出てくるわけです。
そう考えた時に、イ・リーガル・アントレプレナーシップを改めて考えなければいけません。どんな商売をやる時でも、どんな規模の会社であっても、あるいは個人であっても、イノベーションという事業に関わろうとした時に必ず持っていないといけない感覚とは何かと言うと、法と倫理にどう付き合うかなのです。この感覚からスタートすることが重要です。
実は私はこれが、日本人の美徳であると同時に、最も欠けている感覚だと思っています。日本では、これを堂々とやろうとする人たちが、非常に悪の存在として見られやすいというか、サイコパス(良心や共感能力が欠如した特異な性格を持つ人々)として見られやすいですよね。
その傾向は、日本人に顕著だと言えます。
良く良く考えてみると、かつて企業家として活躍していて、今ネット上の論壇としての活動が目立つ「ひろゆきさん」(電子掲示板「2ちゃんねる」の開設者で元管理人の西村博之)、あるいは「ホリエモン」さん(実業家の堀江貴文)らは、ビジネスに関する発言でこういう新しいビジネスを言う時は、必ず法と倫理の隙間を狙った発言するケースが多いです。多分彼らはそういう発想で、「2ちゃんねる」であったり、「ニコニコ動画」(日本最大級の動画配信コミュニティサイト)、あるいはライブドア(堀江貴文が率いたオン・ザ・エッヂが展開した事業)を作り上げた思考の起点にあったのは、多分そこにあるだろうと思います。
彼らのビジネスは法と倫理にどう向き合うかにスタートラインがあっただろうし、彼らの発言が今若者に受けているのは、この社会を上手く生きていくためにはどうしなければいけないのかの背景に、リーガル、イ・リーガル、あるいはエシカル(倫理的な、道徳的な)なところと、アンエシカルなところとどう付き合うかについて、皆迷いながらも今まで通りに杓子定規にコンプライアンスを守っていたら、失敗してしまうと気づき始めたのではないかというのが、今の時代なのではないかと思っています。
そうした時に、この非合法市場に宿る確かなインスピレーション、非合法市場に注目する彼らの考え方の仕組みを一回理解しておくことは、とても大事なことではないかと思います。さらに技術としてそれをあの非合法から合法に変えていく手続きを学んでおくっていうことは、絶対にリアルの社会で経営というものを行う時、あるいはキャリアというものを作っていく時に絶対必要な感覚であると思ったというのが、私がイ・リーガル・アントレプレナーシップを皆に知ってもらうために、この本を書いていくなかで強調してたかったポイントになります。

02非合法を合法に変えるための経営技術の欠如
そこが、高橋先生が読者に伝えたかったポイントでもあるということですね。
もちろん、ある程度成功した企業家の人たちが、非合法と合法の狭間で「これをやってら良いのに」という発言をするときがあり、それは非常に魅力的に思えるのですが、そのままやったら違法であったり、倫理的に問題があるケースが見られます。彼らが持っていて、普通の人には足りないモノは何かというと、企業家たちはちょっと怪しい事業機会を見つけた後に、それをビジネスモデルとしてどう合法化するという絵を描けているはずなのですが、私たちがその事業機会を表面的に受け取ってそのままやってしまうと違法行為になるという、経営技術の有無になると思います。
私としてはもちろん、非合法行為に手を染める若者は増えてほしくありません。しかし、起業して会社を経営していくためには、それこそ法と倫理との付き合い方が大事です。要は、自分たちがやっていることは倫理的に妥当です、悪い言い方をすると筋を通していますよということをどうやるのというのは、経営学の教科書よりも、あるいは法律の教科書よりも、あるいは他の一般的なビジネス書よりも、アンダーグラウンドなアントレプレナーシップというものに注目したときの方が、よりビビッドに見えてしまいます。もちろん、読み物としても絶対面白くなるはずだという計算もありましたが、本書が提供している面白さは、その経営技術を理論的に解き明かしていったことになると思います。
日本でどう企業家を増やしていくのかという問題に対するソリューションにたいして、本書のメッセージを一言で言うと、技術が足りないということに集約されていきます。法律とどう向き合うのか、あるいは倫理とどう向き合うのか。やってはいけないことをやるのがイノベーションだとしたら、そのやってはいけないことをやるために、どういう手順を踏まなければいけないのか。私は日本の経営者やビジネスパーソン、経営に携わるあらゆる人たちに一番足りないのは、この技術的な側面なのではないのかと、私自身50歳を過ぎて改めて強く思うようになりました。

03黒と白を知る者だけがグレーを武器にする
創造的な破壊と起業家精神は、法と倫理の境界に生まれるものという一節が高橋先生の著書に書かれています。闇バイトの話もあったのですが、何が白で何が黒かをきちっと分かっていると、グレーゾーンもどこがグレーなのかもわかるのですが、若者からすると何が黒、いけないのも良くわからなくて、結果的に手を出してしまっている気がします。「これはいけないことだったのですね」などと捕まってから言っていたりします。本当にグレーゾーンを突き詰める人、見逃さない人は黒と白をきっちりと理解しているが故に、グレーゾーンをどうしたら白に持っていけるかを考えることができるわけですね。
ギラギラ系の人たちは、少なくとも自分がやろうとしていること、やっていることに関して黒と白の境界線をしっかりと分かっています。同時にどういう手続きで、それが白と判定されているのかを踏まえて事業を組み立てています。知識を詰め込んで知りすぎていくと創造性がなくなるみたいな話が良くマニュアル的な本で書かれていますが逆です。ここから先が白で、ここから先が黒になる。ここで法律上規制が入っているから、本来のニーズが満たされていないものが計算できるわけです。市場には、これだけのニーズがあるけれど、法律上はここまでしか取引できないと決まっている。その先にある満たされたいニーズがあり、その人達が商売の相手になると考えるのが基本的な発想なのです
だけど、それをそのまま彼らを商売の相手にすると、それは密輸であり、許認可のない状態での違法販売であり、危険行為でありという形で処罰の対象になってしまいます。だとすると、どこまでそれを合法に近づけるのかをまず考え、次はセーフとアウトの判定というのを白の側から逆算して仕組みづくり考えていくことをやっていくのが、先ほ
ど言うギラギラ系の企業家の人たちの基本的な発想なのです。
だとしたら、彼らのインスピレーション発見の源泉がどこにあるかというと、やって良いこととやってはいけないことの境界線がどこにあるのかをしっかりと見極めることにあります。同時にそれは、闇バイトに手を染める若い人たちが典型だと思いますが、「これが違法と知らなかった」というのは、そういう違法と合法の境界を知っている人たちと競争に負けて、食い物にされていることになります。
なので、多分普通に合法のビジネスを「よーいドンでやってください」と言ったら、法律を知っている人とギラギラ系の人に無垢な若者は絶対負けるはずです。これは、もう単純に知るべきことも知らないし、技術も足りないからです。そういう意味では、『イ・リーガル・アントレプレナーシップ 法と倫理のはざまを漂う企業家精神』の本は、理論書でもあり、読み物でもあるのですが、同時に技術書でもあります。本当に本の腰帯のところで悪用禁止って書きたかったぐらいです。
私がこの本の中で紹介させていただいた、漂白して公然化して合法化していく、この3段階のプロセスは、多分大企業であっても、中小企業や個人事業であっても、どこか曖昧グレーゾーンの市場でも見極めて事業化しようとした時に絶対に通らなければいけないルートなのです。そんな中で、その技術の使い方は会社の経営規模に関わらず、ほぼ一緒です。だから、私はこの本を書かなければいけないと思ったのです。ただ、同時に悪用だけはしてほしくはなかったりします。

04若者と管理職にこそ必要な危うい知識
そういうことですか。高橋先生、この本をどういう人に読んで欲しいですか、あるいはどういう人こそ読むべきだと捉えていますか。
こういう本を一番読まなければいけないのは誰か。読者層としては、実は2パターンを想定しています。一つは、若い子たちです。高校生、大学生、あるいは社会人1年目、2年目ぐらいの時は、本当にある意味、日本は平和な社会で法律をあまり意識しなくても、皆が平和に暮らしていける社会であったりします。しかし、ビジネスの社会はできる人ほど法の、良いことと悪いこと、法と倫理の境界をきっちり把握した上で勝負を仕掛けています。そのうえで、勝ち確(勝ちが確定している)の構造を作った上でゲームを仕掛けてくる人がいて、そういう経営技術の優劣を競う市場の中で私たちは生きていかなければことを知っておかないといけません。なので、そういう意味でこのイ・リーガル・アントロプレナーシップは悪い人に巻き込まれないために、同時に悪いことを無自覚にやらないためにもできるだけ若いうちに読んでほしいと思います。
もう一つのターゲットは、いかがですか。
40代・50代ぐらいのビジネスパースンです。近年のコンプラ過剰社会を考えていくと、何をどうやったら良いのかわからなかったりします。法律通りだと新しいことはできません。挑戦的なこともできないというのが、経営者や管理職の人たちが直面している課題だと思います。管理する立場になって、ある時新規事業を立案しなければいけない、無茶をしてでも今の事業を維持しなければいけない、大きくしないといけないとなった時に、多分会社に勤めていくと、どこかで絶対一回や二回、法律や倫理の壁にぶち当たっているはずです。その時に「何がなんでもそれを守らなければいけない」と思考が停止してしまうことは、それを出し抜ける人たち、あるいは海外の国、法律と向き合って闘うことに付き合いながら闘える他の国の経営者に負けてしまいます。私はその点で、経営技術に起因する競争力の差が大きすぎると考えています。
なので、そう考えた時に法と倫理との付き合い方というのは、単に守らなければいけないものというところから、上手く付き合うもの、同時にこの法と倫理の境界を知っているだけで、常にどこにニーズがあるかを把握できるようになります。この技術を研ぎ澄ましているのが、知っているのが、実は海外の経営者だったり、企業家であったりします。逆に、日本の経営者や企業家は、それは守るものであって付き合うもの、利用するものとは基本的に思っていません。もっと言えば、そういうことをやる人は良くないと思っていたりします。そこは多分ミクロレベルの、特に経営者個人レベルの経営能力というか、経営競争力の差ですね。日本の経営者の競争力の差につながっていると思っています。
なので、この本は、一見もう私が本当に野次馬根性で書いたような本に見えてしまうかもしれませんが、その奥にあるロジックは何かというと、法と倫理の付き合い方というものについて改めて日本人は考え直していかないと、本当の意味でイノベーションや競争力、言い換えれば海外の企業と互角に戦えるような経営者は出てこないという問題意識もあります。
だからこそ、私より少し下ぐらいの世代ですね。30代後半から40代前半ぐらいで、これから管理職になって会社を今後引っ張っていく人たちは、イ・リーガル・アントレプレナーシップという考え方がこの世にはあって、ズルいとかひどいと思うかもしれないけれど、それを武器にして勝負を仕掛けてくる経営者が国内にも国外にも沢山いて、そこと戦わないといけないことを知ってほしいというのが、もう一つの側面です。
特にWinnyを取り上げたパートを読んでいただきたいのですが、日本人がP2Pビジネスで負けたのは、私は純粋に技術的な問題だと思っています。それはなぜかというと、Winnyがビジネスとして成立させる鍵になったのは、法と倫理に関わるマネジメント技術の問題だったからです。海外では、これは悪用する人間がいる技術であるということは、IT技術の負の側面からの評価は横に置いておいて、ビジネス上の可能性をいかに合法的に広げていくのかとを考えることができる企業家や投資家、経営者がいて、それを合法的なビジネスへと展開していったのが米国でした。技術的には先行していたはずの日本は、Winnyで一回裁判が起こっただけで、この技術を使って事業展開することを封印してしまったのです。ビジネスとして関わることを、大企業からベンチャー企業に至るまでのすべてが。
これはもう単純に経営技術としての差です。例えば、今は電気モビリティーが問題不気味で流行っていますが、この事業に関わる人達が持っているのは、法律と倫理にどう付き合うのか、それとも向き合ってどのようにビジネスでものを組み立てていくのかという経営感覚、経営スキルですが、彼らは例外だと思います。残念なことに、日本でその経営技術が一番先行して蓄積してきているのはギラギラ系の人たちです。これは情けないと思わなければいけません。

高橋 勅徳 氏
東京都立大学大学院
経営学研究科 准教授
神戸大学大学院経営学研究科博士課程後期課程修了、博士(経営学)。沖縄大学法経学部専任講師(2002‐2003年度)。滋賀大学経済学部准教授(2004‐2008年度)。首都大学東京大学院社会科学研究科准教授(2009年‐2017年度)を経て現職。専攻は企業家研究、ソーシャル・イノベーション論。第4回日本ベンチャー学会清成忠男賞本賞受賞。第17回日本NPO学会賞優秀賞受賞。『ライフスタイル起業~ちょっと働き、ほどよく稼いで、ごきげんに生きる。』(大和書房)、『アナーキー経営学:街中に潜むビジネス感覚』(NHK出版)、『なぜあの人は好きなことだけやって年収1000万円なのか? 異端の経営学者と学ぶ「そこそこ起業」』(集英社)、『婚活戦略 - 商品化する男女と市場の力学』(中央経済社)、『大学教授がマッチングアプリに挑戦してみたら、経営学から経済学、マーケティングまで学べた件について。』(クロスメディアパブリッシング)など著書多数。
