Z世代はなぜ早く辞める?仕事観の特徴と定着のヒント|産業能率大学・小々馬敦教授

 

Z世代の若手社員が早く辞める最大の理由は、一緒に働く人と合わないことです。産業能率大学の小々馬敦教授は、Z世代は会社や仕事の内容は理解して入社しているものの、職場の人との「ケミストリー(相性)」を重視するため、人間関係のストレスが退職につながりやすいと語ります。

生産年齢人口の減少が進み、若手の採用と定着はどの企業にとっても喫緊の課題です。せっかく採用しても早く辞めてしまう――そんな悩みを抱える経営者や人事担当者は少なくありません。

本記事では、ブランドコンサルティング企業の日本法人代表を歴任し、現在はZ世代・α世代の価値観を研究する小々馬教授へのインタビューをもとに、Z世代の価値観と行動特性、仕事の優先順位、上司やロールモデルへの意識、就職活動での親の影響、早期退職の実態、そして「ポジティブに卒業できる会社」が選ばれる理由について解説します。

この記事でわかること

・Z世代の価値観と行動特性――社会貢献意識と「水平に広がる成長」

・Z世代にとって働くことは優先順位の一番ではない

・ヒエラルキーや押し付けを嫌い、ロールモデルを信じない理由

・就職活動で強まる親の影響と、企業に求められる情報発信

・Z世代が早く辞める理由と、「ポジティブに卒業できる会社」が選ばれる理由

取材協力:小々馬 敦(こごま あつし)氏

産業能率大学 経営学部 教授(取材時)。1983年青山学院大学経営学部卒業。第一広告社(現I&S BBDO)やインターブランドジャパンで戦略プランナー、事業開発、経営企画に従事。その後、米国のブランドコンサルティング企業数社の日本法人代表を歴任し、国内外の企業の無形資産価値経営、パーパス経営とブランディング、マーケティングの連携を支援。2013年より現職。専門はマーケティングで、Z世代・α世代の価値観や行動特性を研究。著書に『新消費をつくるα世代 答えありきで考える「メタ認知力」』(日経BP、2024年)。

聞き手:JOB Scopeマガジン編集部

Z世代の価値観と行動特性――社会への貢献意欲が旺盛

Z世代とは、小々馬教授の定義では1997年〜2009年に生まれた世代です(Z世代の定義には諸説あります)。年齢幅が大きく、2〜3年ごとに特性が変わっていくといいます。学生時代から常にスマホでネットにつながり、SNSが生活情報のプラットフォームとして浸透する過程で育ってきたことが背景にあります。

Z世代に共通する価値観 内容
失敗や後悔をしたくない 爆発的に増える情報環境の中で、「情報に惑わされて失敗や後悔をしたくない」という気持ちが強い
社会貢献・利他の意識 中学・高校時代からエコやSDGsをテーマにした授業を受け、「周りや社会の役に立てたらうれしい」という感覚が常識になっている。年齢が下がるほど強い
会社選びのスクリーニング 社会貢献の意識が前提にない職場を、なんとなく選択肢から外す

出典:小々馬教授への取材をもとに編集部作成

成長は「上に登る」ではなく「水平に広がる」

Z世代が貢献したい相手は、今つながっている仲間より少し距離のある「社会」です。この会社に入り、この人たちと働けば、自分も社会につながって貢献できる――そうした自己有用感を実感したいのです。

興味深いのは「成長」のイメージです。上の世代は階段や山を登る上昇志向の絵を描きますが、Z世代は人のつながり(ネットワーク)が水平に広がっていく絵を描くといいます。社会人になれば、より多様な人とつながり、できることが大きくなっていく。だからこそ、会社に入ってどんな人と一緒に過ごすかを大切に考えているのです。

Z世代にとって働くことは「優先順位の一番」ではない

上の世代との大きな違いは、働くこと(会社での時間)が優先順位の一番に来ないことです。

  上の世代 Z世代・α世代
優先順位 仕事が一番、家族との時間・余暇が二番 家族や友人と過ごす時間が一番
会社の位置づけ 生活の中心 大事ではあるが「セカンドプレイス」。ファーストプレイスは家族や友人との居心地のよい場所
背景 自分や家族の生活のために働く時間を第一に考えた 親の世代にワーク・ライフ・バランスや育休制度が浸透し、家族と過ごす時間が多かった

出典:小々馬教授への取材をもとに編集部作成

生活のために働くことが重要だという認識は変わりません。ただ、会社はセカンドプレイスだということを、経営者が理解し尊重することが必要だと小々馬教授は言います(働くことと生活の関係については、上林憲雄教授の解説記事でも紹介しています)。

ヒエラルキーや押し付けを嫌い、ロールモデルを信じない

「理想の上司像は?」と聞いても、Z世代にはピンとこないかもしれないと小々馬教授は言います。SNSやオンラインゲームで、性別や年齢、社会的な立場を気にせず、好きなことが似た人とゆるくつながることに慣れているため、階層のあるピラミッド型の組織が苦手なのです。マウントや圧をかけられることにストレスを感じるため、「上司」という言葉自体にネガティブな印象を持つこともあります。

もちろん、上昇志向の強い学生(学生たちは「バリキャリ」と呼ぶ)も全体の1〜2割はいます。ただ、全体としては、誰の下につくかより、どんな人たちと一緒に働けるかに関心があるといいます。

押し付け・決めつけへの拒否反応

Z世代は、押し付けられること、決めつけられることを強く嫌います。会社の組織だけでなく、広告でも同様です。「この商品はあなたにぴったり」「今選ぶべきベストな商品」というメッセージは、「それって誰が決めたの?」と最初からはね付けられてしまうのです。上下関係で指示が降りてくる伝統的なカスケード型の組織にも、「圧がありそう」と感じています。

ロールモデルを信じない理由

Z世代はロールモデル(キャリアの手本)を信じないとも小々馬教授は言います。親世代は就職氷河期を経て「失われた20〜30年」に働き、成功体験が少ない世代です。上の世代が役職について楽しそうに働いていた姿が、自分たちの世代には降りてこなかった――そうした親の体験を家庭で聞いて育ったため、同じような意識を持っていると見られます。

就職活動で強まる親の影響と、企業に求められる情報発信

Z世代の就職活動では、親の意見の影響が強まっていると小々馬教授は言います。親が「この会社がよい」と強く口を出すわけではありません。親子の仲がよく一緒に過ごす時間も長いため、子どもが就職について親に話し、親も会社のことを調べて共有し、応援する――そうした関係の中で会社選びをしているのです。この傾向は、さらに下のα世代で一層強まると見られます。

  かつての親 今の親
関心 会社の知名度、規模、社会的地位 ネットで調べられる会社の中の情報、深い定性情報
関わり方 量的な印象から子どもの生活の安定を確信する 子どもの意向を尊重しつつ一緒に調べ、「大丈夫」と背中を押す

出典:小々馬教授への取材をもとに編集部作成

今の学生はネットリテラシーが高く、入社1〜3年目にどんな生活ができそうかをリアルに調べ、OB・OG訪問ではネットでわからない情報を確かめに行きます。内定者の親向けの会社見学を行う企業もありますが、小々馬教授は、それよりも親が調べても子どもが調べても安心できる企業情報が、しっかり伝わるように準備されていることが重要だと言います。

Z世代が早く辞める理由――最大の要因は「人との相性」

若者の早期退職や退職代行サービスの利用がメディアで取り上げられています。小々馬教授は、退職代行の利用は限られた現象が頻繁に報じられている面があり、新卒よりも上の年齢層の利用が多いのではないかと見ています。

新卒の早期離職は現実に起きています。厚生労働省の調査では、大卒者の3年以内離職率は33.8%にのぼります(「新規学卒就職者の離職状況(令和4年3月卒業者)」)。小々馬教授は、Z世代が辞める理由を次のように整理しています。

辞める理由 内容
① 一緒に働く人と合わない(最も深刻) 会社のことや仕事、成長の機会は理解して入社しているが、職場の人とのケミストリー(相性)が合わないストレスが大きい。異動で解決できないと転職を選ぶしかなくなる
② SNSで友人の様子が見える 同時期に入社した高校・大学の友人の様子がSNSですべて見え、うらやましく思う場面が行動を起こすきっかけ(発火点)になりやすい

出典:小々馬教授への取材をもとに編集部作成

小々馬教授は、人材の流動性を後押しする社会の空気が高まっており、早期退職は社会全体として止められず、今後さらに増えていくと見ています。

一緒に働く人との相性が退職の最大の要因であれば、職場の人間関係や若手の価値観の状態を早めにつかむことが、定着の手がかりになります。

若手の価値観と職場の人間関係を、データでつかむ

Z世代が辞める最大の理由は、一緒に働く人との相性です。若手社員が職場の人間関係や仕事をどう感じているかを早めに把握することが、定着への第一歩になります。DEFiDEの「生成AIワークバリュー・スコア分析」は、生成AIで従業員の属性や組織の特性に合わせた質問を作成し、組織の状態を迅速にきめ細かく可視化します。

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「ポジティブに卒業できる会社」が選ばれる理由

では企業は、若者の早期退職にどう向き合えばよいのか。小々馬教授は2つの方向を示しています。

向き合い方 内容
① 自社の社風や信念を実直に伝え、マッチング度を上げる 家族的、体育会系、オープンな働き方など、Z世代の働き方の好みは多様。社風を若者に合わせるより、自社が大切にする姿勢に共感する学生は必ず見つかるため、考え方をしっかり伝える
② 人材は社会を流動するものと割り切る やりたいプロジェクトのために入社し、達成感を得たら次の成長機会へ移る。経営者から見ても、プロジェクトごとに最適でモチベーションの高い人材が集まる「ポジティブな人材流動」になる

出典:小々馬教授への取材をもとに編集部作成

外資系企業の経営者を長く務めた小々馬教授自身、数年で全体の3分の1程度が入れ替わることを良しとしていたといいます。業種によっては難しいものの、経営者の考え方次第だというのです。

「あそこの卒業生は良いよね」という評判

評判のよい会社は、辞めていく人も多い一方で、退職後にさまざまな場所で活躍しています。「あそこの卒業生は良い」という評判が生まれると、それを聞いて人が集まってくる――そうしたポジティブな流れをつくっている会社もあります。

「従業員の才は社会資本であり、経営とはその社会資本を借りて、社会価値をつくり社会に還元すること」

――小々馬教授

「自社で活躍できるよう育てる」だけでなく、「他の業界でも活躍できる人材を社会に送り出そう」という思いで、一人ひとりの才を見つけて伸ばすタレントマネジメントを打ち出すことが、かえって従業員を引きつけると小々馬教授は言います。

理念を「プロジェクトの経験」で実感させる

Z世代は会社選びで企業の理念をしっかり見ています。面接で「経営理念に共感した」と話す学生を、企業側が「ホームページを見てきただけ」と受け流すと、学生は「この会社は社員に理念が伝わっていない」と感じます。

一方で、理念は抽象的なため、Z世代は具体性も求めます。今の仕事が理念の実現に貢献していると実感できるよう、プロジェクト単位で経験させること。スキルをどれだけ高めたかは測りにくいため、むしろどんなプロジェクトを経験できたかを、1年に1つ、2つと増やして実感させることが、結果的に長く勤めることにつながると小々馬教授は語ります(新人の定着については、竹内規彦教授の解説記事でも紹介しています)。

よくある質問(FAQ)

Q. Z世代が早く辞める理由は何ですか?

A. 小々馬教授は、最も深刻なのは一緒に働く人と合わないことだとしています。Z世代は会社や仕事の内容を理解して入社しているものの、職場の人との相性を重視するため、そのストレスが大きいといいます。また、同時期に入社した友人の様子がSNSで見えることも、行動を起こすきっかけになりやすいとしています。

Q. Z世代の仕事観にはどんな特徴がありますか?

A. 社会に貢献したいという意識が強く、働くことは優先順位の一番ではなく、家族や友人と過ごす時間が一番です。会社は大事ではあるもののセカンドプレイスという位置づけで、誰の下につくかより、どんな人たちと一緒に働けるかに関心があります。

Q. Z世代はなぜヒエラルキーを嫌うのですか?

A. SNSやオンラインゲームで、年齢や立場を気にせず好きなことが似た人とゆるくつながることに慣れているためです。小々馬教授は、マウントや圧をかけられることや、押し付け・決めつけにストレスを感じやすいと説明しています。

Q. Z世代の就職活動で親はどんな役割を果たしていますか?

A. 親が強く口を出すわけではありませんが、親子の仲がよく、子どもが就職について親に相談し、親も会社を調べて応援する関係になっています。小々馬教授は、親が調べても子どもが調べても安心できる企業情報が準備されていることが重要だとしています。

Q. 若手の早期退職に企業はどう向き合えばよいですか?

A. 小々馬教授は、自社の社風や信念を実直に伝えて共感する学生とのマッチング度を上げること、人材は社会を流動するものと割り切り、他社でも活躍できる人材を育てる姿勢を打ち出すことを挙げています。理念の実現に貢献していると実感できるプロジェクト経験を積ませることも、定着につながるとしています。

まとめ:Z世代とは「共感」と「人とのつながり」で向き合う

  • Z世代は社会貢献意識が強く、成長を「人とのつながりが水平に広がること」と捉えている
  • 働くことは優先順位の一番ではなく、会社はセカンドプレイス。経営者がそれを理解し尊重することが大切
  • ヒエラルキーや押し付けを嫌い、ロールモデルを信じない。就職活動では親の影響が強まっている
  • 早期離職の最大の理由は一緒に働く人との相性。早期退職は今後さらに増えていく
  • 社風を実直に伝えてマッチングを高め、「ポジティブに卒業できる会社」を目指すことが、かえって人を引きつける

後編では、Z世代の次に社会に出てくるα世代とは何か、Z世代との違い、「消費」という概念の変化、多世代が混在する2030年代の職場への備え、そして経営・人事のキーワードとの向き合い方について解説します。

プロジェクト経験と成長を、見える化する

Z世代に理念を実感してもらい、長く活躍してもらうには、どんなプロジェクトを経験し、どう成長したかを本人と会社が共有できる仕組みが役立ちます。DEFiDEの「JOB Scope」は、人事コンサルティングと人事クラウドの2軸で、経営に直結する戦略人事の制度設計から組織への定着までを支援する人事制度改革プラットフォームです。

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▶ 後編:α世代とは?Z世代との違いと、成果志向の若者が加わる2030年代の職場に企業が今すべき準備(内部リンク)

▶ インタビュー全文:Z世代からα世代へ。新たな時代に向けて若者世代とどう向き合っていくか(前編)(JOB Scopeマガジン)

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Written By: JOB Scope編集部

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