3回連続（前編 、中編 、後編 ）で元プロ野球の巨人や近鉄（現、オリックス）の投手で、現在、建設会社・スチールエンジ株式会社中央区代表取締役社長である松谷竜二郎（まつたに りゅうじろう）さん（60歳）を取材した内容を伝えてきたが、今回はその最終回となる。  

松谷社長は、1964年に大阪市で生まれる。1988年、社会人野球の名門・大阪ガスからドラフト2位で巨人に投手として入団。藤田元司、長嶋茂雄の2人の監督に仕えた。当時、巨人は槙原寛巳、桑田真澄、斎藤雅樹、鹿取義隆、ビル・ガリクソンなどをそろえ、「投手王国」と言われていたが、入団1年目で開幕1軍となる。一時期、2軍となるものの、イースタンリーグでノーヒットノーランを2度達成する。1995年に近鉄へ移籍し、1997年に戦力外通告となり、引退。  

その後、建設業界の会社に就職し、2003年からスチールエンジ株式会社の社長を務める。同社の創業は1991年で、現在、2024年12月現在、売上は150億円、正社員は100人。2024年12月現在、13社で構成されるグループ会社の売上が約230億円、正社員は200人。

01　―――

責任が大きくなることに緊張し、胃が痛くなる

松谷社長は、「これまでは概ね順調ではあったが、山あり、谷ありの時期もあった」と振り返る。  

「振り返ると、多くのお客様や協力会社の皆さんのお力添えで比較的順調に業績を拡大できたように思いますが、一時期は本業重視の態勢をつくるために事業のあり方を見直したために売上が減少した時期もありました。スチールエンジでは、150億円前後の売上の今（2024年12月）でも、ほっとする暇がないくらいです。以前に比べれば多くの社員が成長し、各部署できちんとした仕事をしてくれていますから、大きな不安はありません。ですから、安心して大阪や東京のオフィスを往復したり、地方にも出張ができます。  

1か月がたつのは、本当に早く感じます。たとえば、毎月10日になると『ああ、もうか』と驚きます。月末になると、様々なお支払いをしますから経理や総務の社員たちとともに対応します。たとえば、こういう具合に資金を動かすから社員や協力会社に何を伝え、どう動いてもらうのかを考えるのです。売上が増え、規模が大きくなると、社員や関わる仕事や協力会社は増えますから、常に経理や財務を適切に管理しておかないといけない。一時期は、その責任が大きくなることに緊張し、胃が痛くなりました。  

毎月、毎年、こういう状態でしたが、経験を積み、慣れてきました。自信も湧いてきます。最近はある程度の売上となり、かつてのように資金繰りを考える機会は減りましたが、常に経理や財務には注意しています。少なくとも1年程、自分がいなくとも会社や社員、協力会社の皆さんたちが困らないくらいの態勢にするためにも、動ける時にどんどんと動いておきたいと考えているのです。ほっとする時間はあまりありませんね」

02　―――

職人さんたちがいるからこそ、私たちの会社や事業は成り立っている

ここ数年は経営基盤を固め、サービスの質をさらに高めるためにグループ会社をつくっている。  

「スチール（鉄）を使う建設工事は、雨、風、雪などの天候に左右されやすく、天候が悪い期間は工事ができなくなる場合があります。一方で、木造を使う工事やリフォームは天候に左右されることが少なく、予定したスケジュールで工事を進めることができる傾向があるのです。  

スチールエンジの協力会社の職人さんには通常、出来高払いで賃金をお支払いしています。職人さんからすると、スチールの工事を請け負うだけでは天候が悪い時期は収入が減るかもしれません。それは、スチールエンジも一緒です。それを防ぐためにその時期に木造やリフォームの工事の仕事があると、仕事があり、収入が安定し、協力会社の持続的な発展、またスキルアップにつながり、スチールエンジとの関係がより強くなると思いました。この考えから、SE（スチールエンジ）グループ会社として2006年にビーアーム株式会社、2022年にSBリード株式会社を設立しました。  

当初は、私が1人で対応していました。オフィスは、スチールエンジのオフィス内に設けました。初期の頃はたとえば、戸建てリフォームの工事を請け負い、協力会社にその工事を依頼していました。これまでに培った信用があるからか、早いうちにお客様から発注していただきました。プロ野球にいた頃よりはまじめに仕事に取りくんできたので、多少信用していただいているのかもしれませんね（笑）。いずれにしろ、ありがたいことで感謝しています。  

いちばんの信用は、協力会社の職人さんがいい仕事をしてくださり、立派な成果物になることです。お客様は、これをもっとも望んでおられます。ですので、私たちスチールエンジは工事の現場に伺えば、職人さんの仕事の邪魔にならない範囲でお話し、日頃の感謝を伝えたり、たとえばシュークリームを『みなさんでどうぞ』と手渡したりするのです。  

現場で働く職人さんたちがいるからこそ、私たちの会社や事業は成り立っています。スチールエンジやグループ会社と協力会社の皆さんとの相互の信頼関係があれば、このビジネスはきちんと動くし、今後も新たに仕事が生まれると思っています」  

ほかにも、不動産を扱う会社や賃貸、分譲マンションの工事をする会社を設けた。現在、グループ社は13社に及ぶ。  

「基本的には、スチールエンジの本業である建設や工事を大きな柱としてそれと関係が深い不動産管理やマンションの建設などを事業とする会社で構成されます。それらとはやや異業種と言える衣類や食品を扱う会社もあります。  

スチールエンジやグループ会社の社員の家族、協力会社の職人さんやその家族たちが一丸となって事業を進めていきます。それが各社のサービスの質を一段と高め、お客様の満足度を高めることになると思います。その結果として仕事が増え、社員や協力会社の皆さんにより大きな満足を感じ取っていただけるようにしたい、と考えています」

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ベトナムに進出し、グローバル展開を本格化

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「１軍投手陣のローテーションの１人として投げ続け、勝つんだ」

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シリーズ：『あの人この人の「働き方」 』