シリーズ あの人この人の「働き方」
この人に「キャリア」あり!
根拠のない自信が本物の成功に変わるメンタルトレーニング
~メンタルトレーニング国内第一人者・
西田文郎氏が語る
脳を味方につける思考法~
~ 株式会社サンリ会長 西田文郎(その3)~
今回はメンタルトレーニング指導の国内第一人者であり、株式会社サンリ(静岡県島田市)会長、社長大学院「西田塾」塾長の西田文郎氏に聞く。3回完結の3回目で、最終回(その3)。
脳を味方につける強力な思考法を徹底解説する。
西田氏は1970年代から科学的メンタルトレーニングの研究を始め、能力開発指導にたずさわる。大脳生理学と心理学を利用し、脳の機能にアプローチする画期的なノウハウ『スーパーブレイントレーニングシステム』を構築。多数の企業や団体の経営者や実業家、会社員、教育者、プロ・アマを問わず、スポーツ選手を指導し、成功に導いた。2008年の北京五輪では、日本の女子ソフトボールのメンタルトレーナーとして優勝に導いた。多くのトップスポーツ選手を指導するNo.1メンターとしても知られる。
西田文郎氏のキャリア
1949年、東京都生まれ。イメージトレーニング研究・指導の日本におけるパイオニア。科学的で、実践的なメンタルマネジメントが特徴。日本能率協会、日本経営合理化協会、日本経営士会、中部産業連盟などの講師でもある。
スポーツ関連のコーチングでは、プロ野球選手、Jリーガー、プロゴルファーをはじめ、競輪、陸上競技、体操、そのほかにもさまざまな競技で科学的なメンタルトレーニング指導を行い、多くのトップアスリートを成功に導いてきた。
著書に「ツキの大原則」(現代書林)、「強運の法則」(2007年、日本経営合理化協会出版局)、「他喜力」(清談者Publico)、「憶聴の法則」(美里出版)、「命と脳」(海辺の出版社)など多数。
目次
01 ―――
まとめ
西田文郎氏が提唱する核心は「肯定的錯覚」。主なポイントは、以下の通り。
具体例:
- ・肯定的錯覚とは:
結果が出ていない段階で「自分ならできる」「自分は優れている」と脳に思い込ませる「根拠のない自信」のこと - ・否定的錯覚との違い:
肯定的錯覚の人は行動が積極的になり成功を引き寄せ、否定的錯覚の人は行動が萎縮し失敗しやすくなる - ・脳の仕組み:
脳は自分が信じた通りの現実を引き寄せようとするため、思考の質が人生の成否を分ける - ・根拠のない自信の進化:
最初は錯覚でも、行動を続け、成功体験を積むことで「根拠のある本物の自信」に変わる - ・予感の重要性:
能力差が少なくても「できる」というポジティブな予感を持てるかどうかで結果が大きく変わる - ・実践的な方法:
プラス思考のための言葉(例:「自分はこんな弱い人間ではない」)を繰り返し唱える - ・クリアリング動作:
指パッチンなどの簡単な動作でマイナス感情をリセットし、脳をコントロール - ・注意点:
錯覚の誤用は危険。合わない環境で無理に耐え続けるとバーンアウトの原因になりうる
西田氏は「反省するよりも、未来や夢を信じてほしい」と強調。嘘でもいいから自分を肯定し、脳を肯定的に錯覚させる習慣を身につけることが、ビジネス・スポーツ・日常のあらゆる場面で成果を出す鍵になると語る。
02 ―――
根拠のない自信が、根拠のある自信に変わっていく
西田氏は20代の頃は大企業に勤務し、営業を担当していた。営業成績はよく、当時、最年少で支店責任者になった。大抜擢なのだという。

株式会社サンリ会長、社長大学院「西田塾」塾長
西田文郎 氏
「売上をどんどん伸ばし、自信をもっていましたから生意気でした。上司から厳しく怒られた経験はありません。成績が抜群によかったから、怒ることができなかったのかもしれませんね。一部の上司は、叱ってくれました。この方たちは非常に優秀でした。
今にして思うのですが、抜群に優秀な人は少ないものです。ところが、部下からすると上司が優秀に見える。「上司だから、すごいはず」と権威付けて、錯覚している。実は、脳がそのように思い込んでいるだけなのです。
私の場合は、当時から自らを優秀だと信じていました。スタート時点では多くの人が経験はないのですから、自信がないはず。ところが、「根拠のない自信」を持っていました。その錯覚が、やがて「自分は優秀なのだ」という確信に変えていくのです。
99%の人が常識で考えると「到底できない」と思っていることを、優秀な人は「自分ならば必ずできる」と信じている。脳が、そのように錯覚している。だからこそ、困難なことや否定的な条件にぶち当たっても乗り越えてしまう。場数を踏み、能力を高めていくうちにスキルや技術などの保有能力を身につけ、優秀な人になっていく。根拠のない自信が、根拠のある自信に変わっていくのです」
03 ―――
「自分には資質がない」と脳が思い込んでいるだけ
西田氏は「世の中には、2種類の人しかいない」と強調する。肯定的錯覚をしている人と否定的錯覚をしている人だ。肯定的錯覚の人は、自分の力が平均のレベルより優れているという「優越の錯覚」をしている。きっとうまくいくと思い、仕事をする。一方で、否定的錯覚をする人は「どうせ、無理だ」「そんなことできないよ」とあきらめてしまう。
「肯定的錯覚の人も否定的錯覚の人もその時点ではまだ、結果は出ていない。ところが、仕事をする姿勢がまったく違います。結果は比べるまでもないですね。成功は、肯定的錯覚をした人からしか生まれえない。
会社員が、たとえば「自分は社長になれない」と思えばその時点でもう、なれません。「ダメだな」と思うと実際にダメになる。脳は、思っていることを実現します。将来を否定的に錯覚する人は脳が否定的な結果を実現させる。
一方でますます優秀になり、社長になると肯定的錯覚をしている人の脳はそのような現実を引き寄せます。成功を願うならば脳を錯覚させ、否定的錯覚から肯定的錯覚に変える訓練をするべきです。現時点で自分が優秀であるか否かという事実はどうあれ、まずは錯覚することが大切。マイナス思考な人ならば、はじめは嘘でいい。脳をセルフコントロールしたり、セルフイメージを高くすることが必要になります。これも錯覚をさせればいいだけなのです。
嫌な上司や同僚がいたら、「こういう人がいるからこそ楽しい。自分は強くなる」と嘘をつけばいい。脳が、否定的錯覚から肯定的錯覚になっていく。嘘に騙される。資質のない人なんて、実はいない。「資質がない」と脳が思い込んでいるだけ。上司はそれを逆手にとり、「あなたはできるんだ」と言い、部下の脳を錯覚させ、その気にさせておけばいい。「お前は使えない」と言っていると、実際に「使えない部下」になります」
04 ―――
使い方を誤ると、錯覚は怖い
中小企業の経営者には自ら創業したケースが多い。「その経営者は会社に勤務しているときに上司の言うことを聞くことができずに、独立した人が少なくない」とも指摘する。
「彼らは経営する会社が大きくなると、社員には「上司の言うことを聞けないならば反省しなさい」と教えています。反省しなかった人が経営し、成功している…(苦笑)。脳の錯覚があったからこそ、成功できたのだし、錯覚をしているから「反省しなさい」と言えるのです。
使い方を誤ると、錯覚は怖い。たとえば、自分に合わないような会社に残り、向かない仕事をしてストレスを抱え、精神疾患になる人がいます。否定的錯覚をして、脳が燃え尽きながらもがんばっているのだろうと思います。私から言わせてもらえば、そんな会社は辞めてしまえばいい。なぜ、そこまで自分を追い詰めて勤めるのかと考えてほしい。心が病んでまで残らなければいけない理由なんてない。無理を続けると、本当にバーンアウトしてしまいかねない。
上司と部下の関係も同じようなこと。互いに「使えない」と思っている限り、うまくはいかない。嘘でいいから、「使える上司」「使える部下」と思えばいい。やがて、脳がそのような現実を実現させてくれます」
05 ―――
予感の違いが人生を分けていく
全国に数百店舗あった中で一番若い支店長になったが、部下はほとんどが年長者で、自分の親ぐらいの年齢の人だった。ベテランの部下たちに悪戦苦闘を強いられたという。
「年齢、経験、知識、ハード面では年配の部下たちにとても太刀打ちできない。とはいえ、上司としての強権を発動してマネジメントを行ったとしても、効果は現れないだろうと考えました。そこで人の心に目をつけたのです。心理面からのアプローチによって人を動かし、能力を引き出し、職場の成長を伸ばしていこうとした。ある意味で苦肉の策と言えるのかもしれません。
それがやがて会社を離れて、メンタルトレーナーとして独立するきっかけとなりました。ブレイントレーニングという方法を見出し、能力開発研究の発端になった経験とも言えるでしょう。それ以降、人間の心の怖さ、恐ろしさ、そしてその意外な強靭さと意外なもろさを見続けてきました。
たとえば、トップになろうと全力で走っていた社員がバーンアウトしてしまい、無気力になり、やる気を失っていく。そして会社を辞めざるを得なくなるケースが多々ありました。抜群の才能を持ちながら、「自分にはできない」と責め続け、上司や会社に不平不満をこぼしながら退職していく人もいます。
一方で、トップになろうなんて思っていなかったし、身の程を知らない奴だと思われていたような人が幸運をつかみ、成績を上げて上り詰めていくこともありました。その違いはどこにあるのだろうか。おそらく、彼らが人生に対して抱く予感やイメージが違っていたのでしょう。
実は、双方に能力の大きな差はなかったはず。「自分ができるんだ」と予感する者と、「できないかもしれない」「できっこない」と予感してしまう者。その予感の違いが人生を分けていく。人間とは、記憶データ以外の何者でもない。
過去の記憶データから、予感は生まれてきます。できなかったという不快な記憶データを多く持っていれば、「できない」という予感が生まれ始める。自己防衛的な心配や不安が入り込んでくるため、萎縮して、できることもできなくなってしまう。できたという快適な記憶データばかりがあるならば、できる前からもうできた気がして心がワクワクする。それが原動力となり、脳を活性化し、能力を引き出し、力以上のことができるようになる」
06 ―――
反省するよりも、あなたの未来や夢を信じてほしい
西田氏は「プラス思考になるための言葉と動作」を長年、指導してきた。言葉はたとえば「自分はこんな弱い人間ではない」など。自らを奮い立たせるものを日ごろから意識して使うように助言をする。「毎日、何度も何度も口にするようにしてほしい」と言ってきた。
「言葉と同じく、動作も脳を錯覚させます。私の場合、親指や中指で「パチン」と音を立てる時があります。たとえば、妻とケンカをした時に気分を変えるためにします。妻の前ではさすがにしませんよ…。妻にそのことを言っていなかったのですが、ある時に「クリアリングのためにしているんだ」と話してしまいました。どうも、クセだと思っていたようですね。それ以降、「また、クリアリングしているのね」とからかわれることがあります。
クリアリングは、脳を錯覚させること。キリスト教の信者が十字を切ったり、仏教徒が手を合わせたりするのも意味合いは、同じようなものと考えることができます。軍隊で敬礼を軍人に繰り返しさせるのも、似たような効果があります。これらは、ある意味で脳をコントロールしているのです。
講演や研修で「他人に脳を洗脳されるのではなく、自分の意志で錯覚させましょう」と言います。会社員も「プラス思考になるための言葉と動作」をすることで、マイナス思考やマイナスイメージをできるだけ早く、1つずつ潰していくことが大切。言葉や動作は、なんでも構いません。ご自身が好きで、勇気が湧いてくるものがよいでしょうね。
苦しい時に、「プラス思考になるための言葉と動作」をするのはたしかに難しいでしょう。誰もが失敗すれば、落ち込みます。つい、前向きな言葉を発するのができなくなります。だからこそ、ふだんから反復し、習慣にしておくのです。反省するよりも、あなたの未来や夢を信じてほしい。必ず、希望はあります。成功する人は、いいイメージを持つから行動を取る。ただ、それだけの差なのです。どうか、あなたの脳を錯覚させてあげてください」
07 ―――
成功するためには2つの方法しかない
西田氏は会社や団体の経営層やスポーツ選手を中心に指導してきたが、会社員にも機会あるごとに助言やコーチングをした。その際、「脳の仕組みを心得て仕事をするべき」と説いた。
「上司が理解してくれない」と嘆く会社員がいますね。スポーツ選手のメンタルアドバイザーを長年してきましたが、「監督やコーチが認めてくれない」と愚痴をこぼす選手も少なからずいました。
このような選手は「こんなに努力している」と思い込み、認められない努力を黙々と続けます。「努力しよう」と思うと、成功はできない。能力や才能だけに頼ると、ツキや運をつかみ損ねます。上司や会社、監督やコーチに認めてもらえなければ、能力や才能はないのと同じなのです。
ほかにもいます。「正しいことを主張しているのに、理解されない人」「努力家なのに、がんばっているという評判が立つこともない人」「優秀なのに、優秀とは思ってもらえない人」…。いずれも、努力するほどに悪い方向に進んでいく。ツキや運は、他人が運んでくれることを理解していないからです。この現実を心得ているならば、成功するためには2つの方法しかありません。
1つは、「自分に仕事をさせないと損だぞ」と上司や監督に思わせること。もう1つは、監督やコーチに気にいってもらうこと。同じ実績、能力で、調子も同じような選手が2人いたとします。どちらかひとりを試合に出す場合、監督は好感をもっている選手を起用するはず。これは、私が多くのプロスポーツ選手から直接聞くことでもあります。
「実力があれば認められる」と信じ込み、ひとりで努力を続けていくと上手くはいかない。この姿勢をかたくなに変えることなく、消えていった選手をたくさん見てきました」
08 ―――
部下の育成をする時にも、脳の仕組みを心得たうえでするべき
スポーツ選手であれ、会社員であれ、「必要なのはまずは自分のイメージづくり」とも強調する。「イメージをつくるためにはまずは上司や会社、お客さんや取引先、監督やコーチの目に、自分がどのように映っているかを考えてほしい」と語る。
「上司が理解してくれない」と嘆く会社員は、上司からの印象がおそらくよくないのだろうと思います。たとえば、「あんな奴は使えないからこの仕事を与えても、どうせ上手くはできない」というイメージです。
逆に、上司や会社から活躍の場を与えられる人はイメージがいいのだと思います。「この仕事は、あの社員がスペシャリティだ」という評判です。本当にこのようになる必要はなく、あくまで「見た目」であり、「評判」が大切。中身ではなく、「ラッピング」です。
部下の育成をする時にも、脳の仕組みを心得たうえでするべきです。錯覚をさせるのです。そのためには、夢や願望を持たせてほしい。その実現に対して扁桃核が快になるように、徹底的にほめ、期待する。ところが、日本人はほめることに慣れていない。他人の長所にあまり気づかないし、気づいてもほめない。ほめようとしても恥ずかしい。長年にわたり、これは好ましくないと指摘してきました」
09 ―――
ほめられた人は扁桃核が快になり、期待される通りの人になる
よく提案をしてきたのは、「ピグマリオン・ミーティング」。このミーティングは、徹底的に相手をほめる集まり。あらかじめ何分かの時間を決め、1人をみんなでとことんほめちぎり、ほめ尽くす。
「これをすると他人の長所に目が行くようになり、自分の長所にも気づけるようになります。人前でほめることが平気になる。ほめられた人は扁桃核が快になり、期待される通りのビジネスマンになってしまいます。
ピグマリオン・ミーティングは家庭でもチャレンジするといいでしょう。ぜひ、ご自身の子どもにも徹底的にほめるということをしてみてもらいたい。特に小さいうちなら効果があると思います。大きくなってからは難しいかもしれませんが、小さいうちなら大喜びで参加するでしょう。大人にはとてもできないような言葉を使って、親たちをほめるはずです。
父親や母親は自分が子どもにほめられた通りに発言したり、行動を取るということに気がつくでしょう。これが、このミーティングの大きな効果です。ぜひ試みてもらいたい」
10 ―――
人生は楽しいと思い続けられる1%の非常識な人
脳を錯覚させると、仕事や家庭だけでなく、人生そのものが上手くいくと語る。西田氏は、そこまで視野を広げて脳の仕組みを伝えている。

講演の様子
「成功する人は間違いなく、人生が楽しいと思っています。成功してしまったから楽しいと感じるのではない。成功する前から、きっと人生は楽しいものだと思っていたでしょうし、実際にそう信じていた。それが、「ついている人」の正体なのです。
ついていない人の脳が「人生は苦しいものだ」と思っているのは、ついていないからではありません。いつまでも昇進できなかったり、仕事や人間関係がうまくいかなかったから人生を苦しいと感じるようになったわけではないでしょうね。人生は苦しいものだと感じているから、いつまでも成功できずに仕事にも人間関係にもうまくいかないと思っているのです。人間は苦しいものでなければいけない、とマインドコントロールされています。
そのマインドコントロールを自分自身でしている。成功する人は、決してそんなことは思いません。普通に考えれば人生とは苦しいもの、失敗もあるし、挫折も経験する。力不足を痛感したり、人間関係に傷つくことも少なくない。劣等感にさいなまれることだってあるかもしれない。無力感や絶望感に襲われて立ち上がることもできないかもしれない。
しかし、それは99%の人がそう錯覚しているに過ぎない。99%の人間は苦しいと思うにもかかわらず、扁桃核を快にし、人生は楽しいと思い続けられる1%の非常識な人が世の中にはいる。誰もが、実はそういう人になれる。私は長年、それを繰り返し言い続けてきました」
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